カタコトニツイテ

頭のカタスミにあるコトバについて。ゆる~い本の感想と紹介をしています。

「麦本三歩の好きなもの 第二集/住野よる」の感想と紹介

197.麦本三歩の好きなもの 第二集/住野よる 嫌なこともしんどいことも問題にならないほど大切な、世界からのご褒美が贈られる。それは、数えきれないほどの、好きなもの。(p.13) 麦本三歩の好きなもの 第二集 (幻冬舎文庫) 作者:住野よる 幻冬舎 Amazon 図…

「恋する寄生虫/三秋縋」の感想と紹介

196.恋する寄生虫/三秋縋 何から何までまともではなくて、しかし、それは紛れもなくそれは恋だった(p.6) 恋する寄生虫 (メディアワークス文庫) 作者:三秋 縋 KADOKAWA Amazon 社会から隔絶された二人の男女は、秘密を共有しながら行動をともにするうちに恋…

「おやすみ、東京/吉田篤弘」の感想と紹介

195.おやすみ、東京/吉田篤弘 人と人がどんな風につながってゆくかは、様々な理由があり、その理由となる道筋やきっかけが、この街には無数にある。このまちでこの仕事をしていて、いちばん感じるのはそれである。(p.124-125) おやすみ、東京 (ハルキ文庫)…

「雲を紡ぐ/伊吹有喜」の感想と紹介

194.雲を紡ぐ/伊吹有喜 「心にもない言葉など、いくらでも言える。見た目を偽ることも、偽りを耳に流し込むことも。でも触感は偽れない。心とつながっている脈の速さや肌の熱は隠せないんだ。」(p.255) 雲を紡ぐ (文春文庫) 作者:伊吹 有喜 文藝春秋 Amazo…

「青い春を数えて/武田綾乃」の感想と紹介

193.青い春を数えて/武田綾乃 曖昧な微笑。曖昧な返事。私が他者に見せる感情はいつだって、水で薄めた絵の具みたいに芯がなくてぼんやりしている。(p.28) 青い春を数えて (講談社文庫) 作者:武田綾乃 講談社 Amazon 少女から大人へと変わっていく中で生ま…

「ラブカは静かに弓を持つ/安壇美緒」の感想と紹介

192.ラブカは静かに弓を持つ/安壇美緒 音楽というのは、不思議だ。いま目の前にないはずの情景を呼び起こすことができる。(p.47) ラブカは静かに弓を持つ (集英社文芸単行本) 作者:安壇美緒 集英社 Amazon 上司から音楽教室への潜入調査を命じられた孤独な…

「方舟/夕木春夫」の感想と紹介

191.方舟/夕木春夫 「愛する誰かを残して死ぬ人と、誰にも愛されないで死ぬ人と、どっちが不幸かは、他人が決めていいことじゃないよね」(p.197) 方舟 作者:夕木春央 講談社 Amazon 謎の地下建築に閉じ込められた9人の男女が、迫り来るタイムリミットの中…

「シャドウ/道尾秀介」の感想と紹介

190.シャドウ/道尾秀介 人は、死んだらいなくなる。いなくなって__ ただ、それだけ。(p.150) シャドウ (創元推理文庫) 作者:道尾 秀介 東京創元社 Amazon 妻を亡くした父親と小さな息子の周りでは、幼馴染の母親の自殺を皮切りに次々と不幸が起こる中、…

「君のクイズ/小川哲」の感想と紹介

189.君のクイズ/小川哲 クイズに答えているとき、自分という金網を使って、世界をすくいあげているような気分になることがある。僕たちが生きるということは、金網を大きく、目を細かくしていくことだ。(p.44) 君のクイズ 作者:小川 哲 朝日新聞出版 Amazo…

「生ける屍の死/山口雅也」の感想と紹介

188.生ける屍の死/山口雅也 「そうじゃ、死者が甦る奇妙な世界。わしらは、死者の甦りという前代未聞のやっかいな要素を推理の中に織り込んでいかねばならん」(p.440) 生ける屍の死 (創元推理文庫) 作者:山口 雅也 東京創元社 Amazon アメリカ全土で巻き起…

「怪笑小説/東野圭吾」の感想と紹介

187.怪笑小説/東野圭吾 タヌキが飛んだ。彼はそう思った。キューちゃんがタヌキ以外の何かである可能性については全く考えなかった。(p.113) 怪笑小説 (集英社文庫) 作者:東野 圭吾 集英社 Amazon どことなく怪しい雰囲気を醸し出しながら、滑稽にも思える…

「ブラフマンの埋葬/小川洋子」の感想と紹介

186.ブラフマンの埋葬/小川洋子 考えている時のブラフマンが僕は好きだ。普段落ち着きのない尻尾も、思慮深くゆったりとしている。眉間に寄るT字型の皺はりりしくさえある。(p.55) ブラフマンの埋葬 (講談社文庫) 作者:小川 洋子 講談社 Amazon 芸術家の創…

「母性/湊かなえ」の感想と紹介

185.母性/湊かなえ そんなふうに、わたしの存在というのは、母の描く幸せという絵のほんの一部、小道具のようなものに過ぎなかったはずだ。それでも、充分だった。わたしにも、同じ絵が見えていたのだから。(p.59) 母性(新潮文庫) 作者:湊かなえ 新潮社 …

「革命前夜/須賀しのぶ」の感想と紹介

184.革命前夜/須賀しのぶ 「価値観なんて、たった一日で簡単に反転する」(p.121) 革命前夜 (文春文庫) 作者:須賀 しのぶ 文藝春秋 Amazon 冷戦下のドイツに音楽留学のために訪れた主人公は、国内を取り巻く因縁の歴史に翻弄されながらも、自らの音と向き合…

「ライオンのおやつ/小川糸」の感想と紹介

183.ライオンのおやつ/小川糸 ここには、ささやかな希望がたくさんちりばめられている。(p.75) ライオンのおやつ (ポプラ文庫) 作者:小川糸 ポプラ社 Amazon 若くして余命わずかと告げられた女性が、瀬戸内に浮かぶ島のホスピスで過ごす最後の日々をあたた…

「キノの旅/時雨沢恵一」の感想と紹介

182.キノの旅/時雨沢恵一 「止めるのは、いつだってできる。だから、続けようと思う」(p.12) キノの旅 the Beautiful World (電撃文庫) 作者:時雨沢 恵一 KADOKAWA Amazon 国から国へと移動しながら旅をする一人の人間と一台のモトラドは、各地で世界の不…

「タルト・タタンの夢/近藤史恵」の感想と紹介

181.タルト・タタンの夢/近藤史恵 白い皿の上で、アイスクリームは静かに溶けていく。まるで、魔法が解けるように。(p.48) タルト・タタンの夢 〈ビストロ・パ・マル〉 (創元推理文庫) 作者:近藤 史恵 東京創元社 Amazon 商店街にひっそりと佇むフレンチ・…

「鎌倉うずまき案内所/青山美智子」の感想と紹介

180.鎌倉うずまき案内所/青山美智子 「ただ俺は、流れ着いた先での、そのつどの全力が起こしてくれるミラクルを信じてるんだ。思いがけない展開で次の扉が開くのがおもしろいの。」(p.56) 鎌倉うずまき案内所 (宝島社文庫) 作者:青山 美智子 宝島社 Amazon…

「浅草ルンタッタ/劇団ひとり」の感想と紹介

179.浅草ルンタッタ/劇団ひとり お雪のピアノに合わせて舞台上で季節が過ぎていく。劇場の天井の澄み切った青空から光が降り注ぐ。音が光になり、光が歌になる。(p.113) 浅草ルンタッタ (幻冬舎単行本) 作者:劇団ひとり 幻冬舎 Amazon 煌びやかな遊郭が立…

「少女七竈と七人の可哀想な大人/桜庭一樹」の感想と紹介

178.少女七竈と七人の可哀想な大人/桜庭一樹 「ほんのすこぅしだったら」むくむくがつぶやいた。誰にともなく。「なんでも許せる気がしてしまう」(p.70) 少女七竈と七人の可愛そうな大人 (角川文庫) 作者:桜庭 一樹 KADOKAWA Amazon 旭川の街で生まれ育っ…

「ジヴェルニーの食卓/原田マハ」の感想と紹介

177.ジヴェルニーの食卓/原田マハ 先生はひと目ぼれをなさるんだそうです。窓辺の風景に。そこに佇む女性に。テーブルの上に置かれたオレンジに。花瓶から重たく頭を下げるあじさいに。(p.36) ジヴェルニーの食卓 (集英社文庫) 作者:原田マハ 集英社 Amazo…

「本日は大安なり/辻村深月」の感想と紹介

176.本日は大安なり/辻村深月 十一月二十二日、日曜日、大安。大安は、六輝の中で何事においても全て良く、成功しないことはないとされる。だけど、大安はただそれだけでは実現しない。それを可能にするのは私たちだ。(p.222) 本日は大安なり (角川文庫) …

「少女/湊かなえ」の感想と紹介

175.少女/湊かなえ 死は究極の罰ではない。ならば、死とは何だ。(p.118) 少女 (双葉文庫) 作者:湊かなえ 双葉社 Amazon 人が死ぬ瞬間を見たいと願った二人の少女は、互いにすれ違いながら、それぞれが思い描く「死」と言う存在に立ち向かっていく、湊かな…

「神去なあなあ日常/三浦しをん」の感想と紹介

174.神去なあなあ日常/三浦しをん 「手入れもせんで放置するのが『自然』やない。うまくサイクルするよう手を貸して、いい状態の山を維持してこそ、『自然』が保たれるんや」(p.156) 神去なあなあ日常 (徳間文庫) 作者:三浦 しをん 徳間書店 Amazon 都会で…

「嘘の木/フランシス・ハーディング」の感想と紹介

173.嘘の木/フランシス・ハーディング 嘘は暗い緑色の煙となって家のまわりをかすみのようにとり囲み、ささやきあい不思議がりおびえる人々の口からこぼれ落ちる。(p.238) 嘘の木 (創元推理文庫) 作者:フランシス・ハーディング 東京創元社 Amazon 世間の…

「硝子の塔の殺人/知念実希人」の感想と紹介

172.硝子の塔の殺人/知念実希人 人間は最も大事にしているものを踏みにじられたとき、他人を殺すんだ(p.472) 硝子の塔の殺人 作者:知念 実希人 実業之日本社 Amazon 硝子の塔がそびえ立つ館に集められたゲストたちは、館内で巻き起こる不可解な事件の数々…

「か「」く「」し「」ご「」と「/住野よる」の感想と紹介

171.か「」く「」し「」ご「」と「/住野よる 「皆、何を知って色んな人を好きになるんだろう」(p.10) か「」く「」し「」ご「」と「(新潮文庫) 作者:住野よる 新潮社 Amazon 少しだけ特別な力を持った5人の高校生は、そのせいでお互いへの気持ちに戸惑い…

「神のロジック 次は誰の番ですか?/西澤保彦」の感想と紹介

170.神のロジック 次は誰の番ですか?/西澤保彦 わたしたち人間はね、自分が信じるものしか事実とは認めないの。たとえそれが嘘でも、ね。(p.81) 神のロジック 次は誰の番ですか? (コスミック文庫) 作者:西澤保彦 コスミック出版 Amazon 世界のどこにある…

「流浪の月/凪良ゆう」の感想と紹介

169.流浪の月/凪良ゆう 世間は別に冷たくない。逆に出口のない思いやりで満ちていて、わたしはもう窒息しそうだ。(p.117) 流浪の月 (創元文芸文庫) 作者:凪良 ゆう 東京創元社 Amazon 動くことのない事実と決して理解されない真実の狭間で揺れ動く二人の男…

「黒牢城/米澤穂信」の感想と紹介

168.黒牢城/米澤穂信 考え尽くして決したことには、その結果はどうであれ、村重が悔いることはない。だが、考えが及んでいなかったことにはーーー薄い、紙のように薄い、悔いが残る(p.261) 黒牢城 (角川書店単行本) 作者:米澤 穂信 KADOKAWA Amazon 織田信…