カタコトニツイテ

頭のカタスミにあるコトバについて。ゆる~い本の感想と紹介をしています。

「冷たい校舎の時は止まる/辻村深月」の感想と紹介

24.冷たい校舎の時は止まる/辻村深月

 

 「・・・お前ね、自分の痛みより先に他人の痛みに気付くようだとなかなか幸せになれねぇよ」(下 p.375)

 

冷たい校舎の時は止まる(上) (講談社文庫)
 

 

辻村深月のデビュー作であり、メフィスト賞にも輝いた青春ミステリー。


大学受験の前日に雪降る校舎の中に閉じ込められた8人の高校生。

 

彼らはこの校舎に閉じ込められた理由と学園祭で自殺した同級生が誰なのかを思い出すために奔走する。


作内の季節が冬なこともあり、情景描写も含めてどこか冷たくて透き通るような文章で描かれている。


また、一人ひとりの心理描写が丁寧で、登場人物の過去をしっかり掘り下げて人物や物語を形作っている。


8人の中では菅原のエピソードが印象的で好き。彼の背負っている過去が現在に繋がった時、彼の言動や行動がかっこいいと素直に思った。


デビュー作でここまでの長編で伏線を張りながら綺麗に回収する作品を作れるのは末恐ろしい。


個人的には今の家族や恋愛を主題にした作風も好きだけど、この頃のような少年少女が主人公の青春ミステリーも書いて欲しいな。

 

では次回。