カタコトニツイテ

頭のカタスミにあるコトバについて。ゆる~い本の感想と紹介をしています。

「博士の愛した数式/小川洋子」の感想と紹介

44.博士の愛した数式/小川洋子

 

「君はルートだよ。どんな数字でも嫌がらず自分の中にかくまってやる、実に寛大な記号、ルートだ」(p.45)

 

博士の愛した数式 (新潮文庫)

博士の愛した数式 (新潮文庫)

 

 

80分しか記憶を保つことができない博士と、家政婦の、その息ルートとの交流を描いた小川洋子第1回本屋大賞受賞作


事故により記憶がリセットされてしまう博士のもとに家政婦として派遣された私は、博士がルートと名付けた息子と彼の家に通うことになる。


博士はいつも彼らに数字を尋ねた。
数字を介した会話が彼にとっての交流だった。


博士の話す数学は高校で習うような理屈っぽく小難しいものではなく、純粋で美しい数字についてで、読んでても数字の面白さがすんなりと頭に入ってきた。


でも、この作品の主題は数学の知識じゃなくて博士と私とルート、3人の友情とも家族愛とも違う不思議で暖かい関係にあるのだと思う。


数学に関しては饒舌だけども不器用な博士と、子どもながら博士と心通わせるルート。


そして、記憶がなくなると分かっていてもそれを見守りながら博士を労る私の関係は、いつまでも見続けられるような優しい関係だった。


実は、高校生の頃に読んだのだけれど、博士の話で出てくる友愛数の話は今でも覚えていた。


物語で読んだ知識が心に残ってたことが嬉しかったです。

 

では次回。