カタコトニツイテ

頭のカタスミにあるコトバについて。ゆる~い本の感想と紹介をしています。

「麦の海に沈む果実/恩田陸」の感想と紹介

53.麦の海に沈む果実/恩田陸

 

なぜなら、それは私の物語だからだ。私がなぜトランクを失い、どうやってそれを取り戻したかという物語だからである。(p.10)

 

麦の海に沈む果実 (講談社文庫)

麦の海に沈む果実 (講談社文庫)

  • 作者:恩田 陸
  • 発売日: 2004/01/16
  • メディア: 文庫
 

 

三月以外の転入生は破滅をもたらすと呼ばれる全寮制の学園で、二月の最後にやってきた転入生の主人公の少女が謎多き様々な事件に出くわす恩田陸の学園ミステリー。

 

舞台は日本の設定なのだろうけど、どこか異世界にぽつんとあるような神秘的な印象が感じられる。絵本の世界みたい。

 

主人公の理瀬は一年前の記憶を失っており、「三月の国」と呼ばれる学園での生活に戸惑いながらも、学園の仲間たちと仲を深めていく。

 

そんな中、学園では急に生徒が行方不明になっているという噂を知り、学園に対する不信感が募っていくのも束の間、生徒が不審な死を遂げるようになる。

 

「三月の国」の謎と理瀬の記憶、そして次々と起こる生徒の死。

 

様々な現実離れした出来事が学園で起こっているにも関わらず、それが違和感なくこの世界では起こりえると、自然と読者に受け入れさせる雰囲気が作者によって作られているのが圧巻だった。

 

ミステリーともファンタジーとも形容しがたい不思議な世界観で描かれた小説なので、興味本位でも良いので読んでみてほしい。他の人の感想も聞いてみたくなる物語です。

 

では次回。