この本は、わたしの人生を変えた。(p.9)
ある有名ミステリー小説家の紛失した結末部分の原稿を巡って、小説の物語と現実で巻き起こる事件を長編で描いた、新進気鋭の作家アンソニー・ホロヴィッツによる長編ミステリー。
2019年に海外ミステリーの賞を総なめにしたホロヴィッツの作品とあって、読まずにはいられなった。
上巻ではミステリー作家であるアラン・コンウェイの「カササギ殺人事件」という小説が舞台となり、中世の小さな村で起こる殺人事件を名探偵アテュカス・ピントが解決する、いわゆる海外古典ミステリーでよく目にするストーリーが展開される。
それが打って変わって下巻では舞台が現代へと移り、紛失した小説の結末部分を探すため編集者のスーザン・アイランドが奮闘する物語が中心になる。
上下巻でここまで世界観や印象が変わる作品も珍しい。この奇抜な構成を考え出した時点で異色の作家だなと感じるくらい。上巻の締め方も前代未聞。
本作では上巻・下巻ともに謎がふんだんに散りばめられてるのだけど、驚くのはその容疑者の多さ。軽く10人を超える登場人物が容疑者として存在している。
特に上巻では視点が次々と変わり、登場人物たちの心理描写が多くなるのだけど、どいつもこいつも隠していることがあったりで読者を惑わせる。皆一様に怪しい。
また下巻ではその小説の内容にもリンクする部分があり、上巻の謎にモヤモヤしつつ、どう転ぶかわからない結末にハラハラしながら読み進めることになる。
「現代ミステリ」と「古典ミステリ」が融合した正々堂々、真っ向勝負のミステリー。
でも、いろんな楽しみ方ができる物語だと思います。
では次回。