変わらない明日が来るなんて、もう世界は約束してくれないのを知っていたのに。(p.200)
隕石が落ちたことにより塩が世界を埋め尽くす「塩害」の時代を迎えた東京で、元自衛隊員の秋庭と両親を塩害で亡くした少女真奈の、様々な人ととの出会いと別れを描いた有川浩の恋愛物語。
「図書館戦争」や「植物図鑑」で有名な有川浩のデビュー作であり、「空の中」「海の底」に続く自衛隊三部作の第一作目となる。
2人の純粋な恋愛描写もさることながら、塩に覆われた世界という舞台設定の上で成り立っているのが普通の恋愛小説とは異なるところ。
実際、彼らが仲を深めるまでの過程は、「塩害」に翻弄された人々との触れ合いを通して描かれている。
「塩害」による甚大な被害が拡大し続ける中で、無慈悲な世界に傷つきながら、必死でもがきながら生きている登場人物たち。
そんな混沌とした世界でも、決して大切なものを離そうとしない二人の関係性は、どれだけ理不尽な目に合おうと揺ぎの無いものだった。
また、それぞれのエピソードで描かれている登場人物たちにも自分だけの物語があり、もうすぐ塩になってしまうかもしれない状況の中で、必死に最後の一瞬まで生きていたことが描かれているのも、単なる恋愛小説では終わらない部分で良かった。
恋愛小説はほぼほぼ読まないのだけれど、高校生のころ唯一読んでたのが有川さんの作品だった。また、読んでみよっかな。
では次回。