73.世界地図の下書き/朝井リョウ
とんでもなく広い宇宙に放り出された気がした。(p.179)
両親を事故で無くした少年が養護施設で子供たちと暮らしていく中で、徐々に絆を深めながら現実に立ち向おうとする、朝井リョウの長編小説。
小学生の太輔は「青葉おひさまの家」に引き取られ、同じように身よりのない子どもたちと出会う。
最初は馴染むのに苦労していたが、高校生でみんなのお姉さん代わりの佐緒里との交流をきっかけに、段々とこの場所が自分の家なのだと実感するようになる。
子供たちはそれぞれ悩みや不安を抱きながらも、ある計画のために協力しあって学校や街を巻き込んで行動を起こす。
否が応でも立ちはだかる現実に対して、時に壁にぶつかり、時に逃げたくなるほど不安に覆われても、どこかにある希望を諦めずに追い求めていく子どもたちの姿に心が締め付けられた。
決して全てがうまくいくわけではなく、努力が必ず実るわけではない。
必死に自分の殻を破って成し遂げたものが、現実を変えるとは限らない。
そんな環境の中で、子どもだからこその無邪気な残酷さに翻弄されながらも生きていく彼らに、立ち向かうための勇気を貰った一冊だった。
では次回。