カタコトニツイテ

ゆる~い本の感想と紹介をしています。想うこともつらつらと。

「神様のビオトープ/凪良ゆう」の感想と紹介

102.神様のビオトープ/凪良ゆう

 

もともと幸福にも不幸にも、決まった形などないのだから。(p.285)

 

神さまのビオトープ (講談社タイガ)

神さまのビオトープ (講談社タイガ)

 

亡くなった夫の幽霊と一緒に暮らす主人公と、歪な愛を携えながらも懸命に生きようとする者たちへの救済を描いた、凪良ゆうの連作短編集。

 

「流浪の月」2020年の本屋大賞を受賞した凪良ゆうさん。
でも実は、この本自体は凪良ゆうさんが書いたものとは知らずにだいぶ前に読んでいた作品だった。

 

夫を事故で亡くした妻のうる波のもとに、ある日死んだはずの夫である鹿野くんが幽霊となって現れ、今まで通り一緒に暮らすことになる。

 

幽霊と言えども普通に話しかけてきて朝食をともにする鹿野くんと、おかしいと思いながらもこの関係が壊れなければ良いと思い続けるうる波の他愛もない会話には、奇妙だけどもどこか不思議と暖かさを感じる。

 

そんな二人が出会うのは機械の親友を持つ少年小さな子どもを一途に愛し続ける青年など、様々な愛の形を抱く人々。

 

彼らは自らの歪で不確かな愛情にもがき苦しみながらも、自分たちにとっての「救い」とは何かを模索しながら、必死に生きようとする。

 

そんな彼らの姿を見つめるうる波たちも一種の歪んだ愛情が作り上げる自分たちの状況にどのように向き合っていくのかを、物語通して自問自答していく。

 

右に倣えの現実に目を向けるためなんかに、ぽっかりと空いた寂しさを繕っているものを手放す必要なんてなくて、歪だろうがねじ曲がっていようが、秘密を抱いたままひっそりと幸せを享受して生きていく権利は誰にでもあるのだろうと、読み終わった今は思う。

 

幸せを決めるのは自分たちなのだから、周りの目線に左右されるものではないのかもしれない。今の世の中では、どうしても気にしてしまいがちだけども。

 

短編一つ一つにも趣向が凝らされていて、あっと驚く展開もある。
物悲しくて、儚い雰囲気が好きな人はぜひ読んでみて欲しい。

 

では次回。