カタコトニツイテ

頭のカタスミにあるコトバについて。ゆる~い本の感想と紹介をしています。

「ぼくのメジャースプーン/辻村深月」の感想と紹介

107.ぼくのメジャースプーン/辻村深月

 

人間って、絶対に他人のために泣いたりできないんだって。(p.82)

 

ぼくのメジャースプーン (講談社文庫)

ぼくのメジャースプーン (講談社文庫)

 

学校で起きた凄惨な事件によって心を閉ざしてしまった少女のため、特殊な能力を持つ小学生の主人公は犯人への復讐を試みる、辻村深月の長編小説。

小学生のぼくが通う学校で飼っていた兎が何者かによって惨殺され、その現場を目撃した幼なじみのふみちゃんは言葉を失ってしまう

犯人とされる大学生が逮捕されないことを知った主人公は、自分が持つ「条件ゲーム提示能力」という特殊な能力を用いて彼に復讐することを決意する。

動物を殺した犯人に値する罰とは何なのか。
罰を与えることで兎の命やふみちゃんが元に戻る訳ではないし、相手が反省するとも限らない。

能力の使い方を学ぶために訪れた秋先生のもとで、彼は復讐という行為の非条理さを知ることになる。

例え小学生だとしても容赦なく、死による償いの是非人間の本質について問う。
最後まで厳しさと主人公を想う優しさを兼ね備えている秋先生が素敵だった。

小さな主人公が理想と現実の隔たりに押し潰されそうになりながら最後まで悩み抜いて導いた答えは、あまりにも切なくて心が苦しくなる。

決して綺麗事で終わらない辻村さんの物語が好きだし、痛みを抱えながらも生きていく主人公たちをこれほどまでリアルに描くことができるんだと感心してしまう。

 

では次回。