108.ヒッキ―ヒッキーシェイク/津原泰水
君たちは実際に世界を救うよ、バグだらけのヒッキーズが(p.221)
ヒキコモリとして生活していた4人がカウンセラーの男の策によって、人間創りのプロジェクトに参加することになり騒動を巻き起こす、津原泰水の長編小説。
表紙だけ見てバンドの話かと思ったら全然違った。
読み終わってから再度見るとキーワードが散らばっていて面白い。
それぞれ異なる理由で外の世界を拒絶してヒキコモリとなった、タイム、パセリ、セージ、ローズマリーの4人はヒキコモリを支援するカウンセラーの男によってインターネット上で引き合わされる。
年齢も性別もバラバラの4人が集められた理由は、人型AIやロボットに存在する違和感である「不気味の谷」を越えた人間を創るプロジェクトに参加するためだった。
目的も不明なプロジェクトに対して、始めは戸惑いを隠せなかった彼らだったが、次第に仕事にのめり込んでいくにつれて外の世界と関わるきっかけが生まれ、自らの境遇と向き合うことになる。
この作品、話が二転三転しては展開が目まぐるしく変化するので、どういう結末に向かっているのかさっぱり分からないまま読み進めることになった。
ただ、それがこの物語の魅力でもあるし、作中の登場人物の言葉を借りるなら「まるで巨大な文化祭に巻き込まれた」ような徒労感と充足感に包まれる作品だと思う。
個人的には1クールでアニメ化して欲しい。
話のテンポも良いし、何より映像で見てみたい。
では次回。