115.ステップファザー・ステップ/宮部みゆき
仕事中に屋根から落ちてしまった泥棒が中学生の双子の兄弟に助けられたことから、彼らの父親として生活する日々を綴った、宮部みゆきのコメディミステリー。
これまた久しぶりの宮部みゆきさん。「火車」「レベル7」以来。
ちなみにステップファザーは継父と言う意味。
屋根から落ちて大けがをした主人公は中学生の双子の直と哲に助けられたものの、泥棒である弱みを握られたことから、嫌々ながらも彼らの父親役を務めるはめになる。
しかし、この中学生の双子たちがこれまた一筋縄ではいかない子供たちであり、主人公は何かと言いくるめられながら渋々頼みごとを引き受けていく。
またこの物語では、ただ彼らの生活がゆるやかに描かれるわけではなく、日常の中で遭遇する謎や事件にいつの間にやら巻き込まれることになる。
ライトなタッチで描かれる謎も魅力的なのだけども、何といっても双子と主人公の小気味いいテンポで交わされるユーモラスな会話が特長的。
ふざけて交互に言葉を繰り出す双子たちに翻弄され、仕方なく父親として接する手前、どこかその生活に親しみを持ち始める主人公の心中に共感を覚えては微笑ましくなる。
短編形式で非常に読みやすかった。
それにしても90年代の作品と知って驚き。
道理で携帯もスマホも登場しないわけだ。
では次回。