カタコトニツイテ

ゆる~い本の感想と紹介をしています。想うこともつらつらと。

「夜空に泳ぐチョコレートグラミー/町田そのこ」の感想と紹介

118.夜空に泳ぐチョコレートグラミー/町田そのこ

 

あたしたちはこの広い世界を泳がなきゃいない(p.99)

 

 

ここじゃないどこかへ行きたいと願う気持ちに揺れ動きながら、今立っている場所で懸命に生きていく人々の姿を描いた、町田そのこの連作短編集。

 

最初に言っておくと、めちゃくちゃ好きだった。

ここ最近読んだ短編集で一番。タイトルも素敵。

 

理不尽に起こる出来事に耐えながら、狭い町の中で密やかに成長していく少年少女の姿を描いた表題作を始め、他4編も決して幸せいっぱいな日常が描かれるわけではない。

 

今立っている現在地で誰もが底知れぬ不安を抱えている。そして、遠くを見据え、迷いながらも一歩を踏み出す姿には、まるで水槽の中にいるかのような息苦しさを覚える。

 

それでも、例え彼らは水槽の中で一生を過ごすのだとしても、複雑な人間模様を必死にかき分けながら少しづつ大人になっていく。

 

また、それぞれの物語にはあっと驚く仕掛けが施されており、全ての短編を読み終わった後は、物語の中で生きる人々の一つ一つの想いにあてられて居ても立っても居られなくなった。

 

個人的に、町田さんの作品はどこか身近な場所で起きうる物語のような気がするのに、なぜだか現実味がないような、ある種の「浮遊感」をまとっている気がする。
不安と安堵が入り混じったような、そんな感覚。

 

今年の本屋大賞を受賞した「52ヘルツのクジラたち」が気に入った人は、この物語もぜひとも読んで欲しいな。きっと好きになるから。

 

では次回。