カタコトニツイテ

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「永遠の森 博物館惑星/菅浩江」の感想と紹介

123.永遠の森 博物館惑星/菅浩江

 

地球の衛星軌道上を浮かぶ、全世界のありとあらゆる芸術品が収められた博物館惑星で、芸術に触れた人々の想いを解き明かす、菅浩江の短編SF小説

 

博物館惑星アフロディーテ
そこには動植物、美術品、舞台芸術など、この世に存在する美術品のほとんどが集められており、各分野を司るデータベースと専門の学芸員によって管理されていた。

 

そんな各部門を統括するアポロンと呼ばれる部署に所属する主人公は、美術品の展示を巡って各部門で起こる対立の調停などに悩まされながらも、データベースに直接接続する力を扱いながら、仕事に勤しんでいく。

 

そんな彼のもとには、数々のいわく付きの美術品が日々搬入される。
それぞれの物品に込められた、人々の想いや感情とともに。

 

芸術をめぐる九つの物語では、芸術の価値をデータや記録から追求すると同時に、芸術品に付随する目には見えない感情や情動に触れながら、その品々に秘められた謎を解きほぐしていく姿が描かれる。

 

また、最後に綴られる物語では、読者がこれまで様々な芸術品を巡って起こる出来事を追体験したことによって、主人公が積み重ねられた言葉や出会った人々の想いを受けとめながら進んでいく姿に、より共感させられる気がした。

 

あまり他にない舞台設定だったけども、それぞれの部門の垣根を越えて、芸術と真摯に向き合う主人公たちの姿にはとても感銘を受けたし、穏やかで優しいエピソードが多かったので、SF作品が苦手な人にもおすすめ。

 

では次回。