129.いつかの岸辺に跳ねていく/加納朋子
石は意思を持って、遠く未来に跳ねていく。(p.318)
大きな体と穏やかな人柄を合わせ持つ少年と変わり者でありながらお人好しで誰にでも優しい幼馴染の少女、そんな二人の物語が重なった時、お互いを思いやる温かな真実が明らかになる、加納朋子の長編小説。
「日常の謎」にフォーカスした作品が多い加納さん。
好きで何冊も読んでいるのに、意外にも紹介するのは初めてだった。
恵まれた体を持っていたことから「クマ」というあだ名で呼ばれていた主人公の護は、怪我によって部活を満足にこなせない時期もありながら、順調に学校生活を送っていた。
対して、幼馴染である徹子はどこか変わり者で、突然人の手を握ったり、授業の最中に急に泣き出したりと、突拍子のつかない奇怪な行動を繰り返していた。
主人公は、そんな風変わりな幼馴染の行動を不思議に思うと同時に、彼女の自分を顧みない真っ直ぐな優しさを時に心配しながらも、次第にその人柄に惹かれていく。
しかし後編になって、主人公の視点が変わると物語は一変する。
まるで水面を跳ねる水切り石のように、それまでのふとした軌跡を辿りながら、物語は思いもよらぬ着地点へと繋がっていく。
自分でどうにかしなければならないこと。他の人に頼ってもいいこと。
その二つの線引きが曖昧になればなるほど、無理に背負っていく荷物が増えていく。
きっと、そのバランスを均等にうまく保っている人なんて一握りで、多くの人がその重みに耐えかねて投げ出してしまったり、潰されてしまう寸前まで抱え込んでしまう。
でも、この作品に登場する二人のように、片方が背負った重荷に気づいてくれたならば、片方は支えられることを恐れずに受け入れることが、何よりも大事なんじゃないかと思った。
自分も友達が背負いすぎた荷物に気づいた時に
手を差し伸べてあげられる人でありたいな。
では次回。