カタコトニツイテ

ゆる~い本の感想と紹介をしています。想うこともつらつらと。

「有頂天家族/森見登美彦」の感想と紹介

130.有頂天家族/森見登美彦

 

世に蔓延する「悩みごと」は、大きく二つに分けることができる。一つはどうでもよいこと、もう一つはどうにもならぬことである。そして、両者は苦しむだけ損であるという点で変わりはない。(p.72)

 

現実さながらの京都の街を舞台に、狸達が一風変わった大騒動を繰り広げる森見登美彦の毛玉ファンタジー

 

2013年にはアニメ化もされた作品。
相変わらず森見作品とアニメの相性がすこぶる良いので、欠かさず見てほしい。

 

狸の名門、下鴨家の三男である矢三郎「面白きことは良きことなり」を口癖に、人間に化けては狼藉を働き、阿呆の血の赴くままに京の街を駆け巡る。

 

あるときは師匠である天狗の赤玉先生と口論を繰り広げ、底意地の悪いライバル狸の金閣銀閣とはしょっちゅう喧嘩を始め、元は人間でありながら天狗となった妖艶な美女・弁天にはたぶらかされる日々。

 

そんな下鴨家の一族は阿呆の矢三郎を筆頭に、長男は偉大なる父には遠く及ばぬ器量の持ち主、次兄は狸であるながら蛙の姿で井戸に引きこもり、四男は少しばかり勇気が足りない意気地なしと、どうしようもない有様であった。

 

しかし、父を亡くすことになったある日の事件から渦巻く因縁はやがて、狸、天狗、そして人間を巻き込んだ世紀の大騒動へとなだれ込み、下鴨家も一族の誇りと父の威厳ををかけその争いに参戦していく。

 

ただでさえ、狸が主人公であるという奇妙な設定であるにもかかわらず、いつにも増して森見ワールド全開の面白おかしい表現の数々がふんだんに盛り込まれている。

 

それに加えて、京都の伝統行事を交えて描かれる荒唐無稽な出来事は、こちらに飽きる暇など与えないほど愉快で痛快だった。

 

かと言って、物語を通して阿呆な騒動ばかりを起こしているわけではなく、母親を想い一致団結する家族愛や、阿呆と言われようとそれぞれが信じる義を押し通す、人情ならぬ狸情に溢れた作品となっている。

 

個人的には、次男の矢二郎が好きだった。
一番、人間味を感じたから。まぁ蛙の姿をした上、狸なんだけど。

 

では次回。