カタコトニツイテ

ゆる~い本の感想と紹介をしています。想うこともつらつらと。

「フーガはユーガ/伊坂幸太郎」の感想と紹介

140.フーガはユーガ/伊坂幸太郎

 

僕の弟は僕よりも結構、元気です。とは風我のことを説明する時によく口にした台詞だ。いつだって彼が僕を引っ張っていく。(p.55)

 

親から愛情を注がれなかった双子の兄弟が過ごした激動の日々は、非情な運命に振り回されながらも、大切なものを守るために相対する現代へと繋がっていく、伊坂幸太郎の長編小説。

 

最近、文庫化されてずっと読みたかった作品。
個人的には、初期の頃の切なさと優しさが内包された雰囲気を感じて、何だか懐かしい気持ちになった。


この物語の主人公である常盤優我は、仙台のファミレスである男に自らの半生を語り始める。

 

彼は双子であり、弟の名は風我と言い、彼らには兄弟の間にだけ起こる不思議な能力があった。

 

誕生日にだけ起こるその不思議な能力は、決して使い勝手のいいものでも無くて、むしろ良い迷惑なんじゃ無いかと思うくらいだけども、二人の兄弟はそれらを巧みに、時には思いつきで活用しながら、理不尽で救いようのない社会に抵抗する。

 

家で暴力を振るう父のこと、双子で協力して友達を助けた時のこと、不幸な環境に閉じ込められた少女を救いに行った時のこと、そして、幼き頃に出会った忘れられない事件の記憶。

 

淡々と彼の口から語られる出来事は、決して安易に飲み込めるものではなくて、不運に見舞われながらも兄弟二人で必死に乗り越えながら、大切なものを守るために戦ってきた何よりもの証拠だった。

 

そして、幼い子どもたちに降りかかる陰惨な事件は、認めたくないけども現実のそこら中に転がっていて、だからこそ、ぶつけようのない憤りやり切れない無力感を抱かせる。彼ら兄弟が最後まで目を逸らさなかったものが、いかに不条理な存在だったかを思い知らされる。

 

細やかな伏線とともに、過去の回想から現代へと畳みかけるように進んでいくストーリー展開は相変わらずお見事だった。切ないけども、前を向くことはできる。

 

それにしても、伊坂作品におけるサブキャラクターが自分はとても好き。
この物語の登場するワタボコリも漏れなく、お気に入りのキャラクターになった。

 

では次回。