カタコトニツイテ

ゆる~い本の感想と紹介をしています。想うこともつらつらと。

「わたしの美しい庭/凪良ゆう」の感想と紹介

144.わたしの美しい庭/凪良ゆう

 

___それでいいんだよ。幸せに決まった形なんてないのだから。(p.23)

 

小さな神社が屋上にあるマンションで、ままならない想いを抱えながらも、前を向いて日々を生きていく人々を描く、凪良ゆうの長編小説。

 

新年も明けて気持ち新たに読める作品が良いと思ったので、この作品を選んだ。凪良さんが描く救いの物語は満ち足りない幸せであることが多いけど、そこが好きだったりする。

 

小学生の百音は父親の統理、そして同じマンションに住む路有とともに、周囲からは変わっていると噂されながらも、何気ない日々を健やかに過ごしていた。

 

そんな彼らが住むマンションの屋上には、小さな神社が美しい庭の一角に建てられていて、様々な人々が心に絡まる悪縁を断ち切ってもらうためお祈りに訪れる。

 

緩やかな日常で浮き上がる憂鬱、心の底で澱のように溜まっている未練、目には見えないのにのしかかる周囲からの重圧

 

まるで小さな棘のように、日々を過ごす中でチクチクと突き刺さるそれらは、忘れたいはずなのに心の隅に居座り続けては、ふとした瞬間に目の前に現れる。

 

ただ、この物語では、そう言った逃れられない悲しみを無かったことにはしない。
登場人物たちは悲しみをありのまま受け入れた上で、決まった形のない幸せを受け取れる場所を探しに行く。

 

悲劇的な出来事、特異な人柄や関係性といった「普通」ではない事象に、人はどうしても「変わっている」という烙印を押して、身勝手な感情を嫌味なく押し付けてしまう。

 

5歳で両親を事故で失うことも、離婚した妻が遺した血の繋がらない娘を引き取ることも、同性を愛することも、きっと世間から見れば「普通」ではないのかもしれない。

 

それでも彼ら三人は、周囲から変わっていると言われようと、かわいそうだと思われていようと、彼らにとっては「普通」であるその生活を、何不自由なく過ごしている。
胸を張って好きだと言える暮らしを送っている。

 

どこか儚げで、蜃気楼のような雰囲気を感じる作品だったけど、温もりを感じるような確かな優しさもたくさん詰まっていた。言葉選びも好きだったから、また、いつか読み返したいな。

 

では次回。