カタコトニツイテ

ゆる~い本の感想と紹介をしています。想うこともつらつらと。

「アイネクライネナハトムジーク/伊坂幸太郎」の感想と紹介

153.アイネクライネナハトムジーク/伊坂幸太郎

 

「いいか、後になって『あの時、あそこにいたのが彼女で本当に良かった』って幸運に感謝できるようなのが、一番幸せなんだよ」(p.28)

 

登場人物たちが何気なく日々を過ごす中で起こる出来事に、小さな奇跡が重なり合って物語が紡がれる、伊坂幸太郎連作短編集。

 

近年、実写映画化された作品でもあり、もう読んだと思い込んで映画館に行ったら実は未読だったという、思い出深い作品でもある。

 

それぞれの章に登場する人物たちは、誰も彼もが順風満帆な人生を送っているわけではなくて、溜め息を一つ吐いて、道に転がる石ころにつまづきながらも、楽しいだけじゃない日々を踏みしめながら歩いていく。

 

それでも、彼らの生活に息づくちょっとした行動や会話を覗いてみると、何だか悩むのも馬鹿らしくなるような、不器用で憎めない人間味に溢れている。

 

この作品で起こる、小さな奇跡。

 

それは奇跡と呼ぶには些細なものなのかもしれないけど、それを表現するにはやっぱり奇跡と形容するしかなくて、形を変えながら登場人物たちの明日を照らしていく。

 

この作品を読み終わった後は、情けなくも愛おしい登場人物たちを想いながら、嫌でも迫ってくる面倒な明日にちょっとだけ期待してみたくなる。

 

ちなみにアイネ・クライネ・ナハトムジークとはドイツ語で「ある小さな夜の曲」という意味。でも、曲は体が弾んでいくような心地良いメロディなので、小さくもないし夜の曲でもない気がしてならない。

 

では次回。