カタコトニツイテ

ゆる~い本の感想と紹介をしています。想うこともつらつらと。

「夜市/恒川光太郎」の感想と紹介

164.夜市/恒川光太郎

 

やがて夢は現実にとすりかわる。(p.63)

 

この世のものではない妖怪たちが、様々な品物を売る「夜市」に紛れ込んだ人々の儚い人生が描かれる、恒川光太郎ホラーファンタジー

 

逢魔が時に突如として現れては、森の奥で夜な夜な開かれる「夜市」
その場所では、望んだものが全て手に入る。

 

しかし、その「夜市」に迷い込んだが最後、闇の中を彷徨い続け、何かを買うまで外に出ることはできない。

 

主人公の青年は、小学生の頃に迷い込んで以来、再びその「夜市」を訪れる。
野球の才能と引き換えに売ってしまった、弟を取り戻すために。

 

この作品で描かれるのは、狂気的なホラーではなく、背筋がひんやりとする怪談を聞いた時に感じる、暗闇に消え入っていってしまうかのような恐怖。

 

そして、そんな風前の灯のような儚さを伴った恐怖は、文章に滲む神秘的な表現によって、幻想と現実が入り混じった不思議な情景を作り出している。

 

特に、後半に収録されている「風の古道」は、その世界観、物語に否応なく引き込まれた。古くから伝わる昔話を読んだ時のような懐かしさを憶えた。

 

出逢ってはいけない、それなのに、不意に誘われてしまう危うさ。
そんな魅惑の世界が広がっているので、夏の短夜に読んでみて欲しい。

 

では次回。