カタコトニツイテ

ゆる~い本の感想と紹介をしています。想うこともつらつらと。

「闇に香る嘘/下村敦史」の感想と紹介

165.闇に香る嘘/下村敦史

 

「完全な暗闇に思えても、必ず光は存在する。それに気づかないと、自分で自分を不幸にしていくだけなんだろう。」(p.245)

 

両目を失明した主人公は、今まで兄だと信じていた人が本物の兄なのかを疑い始める、下村敦史の長編ミステリー。

 

あるきっかけで両目を失明してしまった主人公の和久は、孫への腎臓移植のため検査を受けるも、自身の腎臓が移植に適さないことが事実を知らされる。

 

途方に暮れる中、藁をも掴む思いで兄の竜彦に移植を引き受けてくれないかと懇願するが、彼は頑なに依頼を拒み、腎臓移植に伴う適性検査さえも拒否されてしまう。

 

そんな断固とした兄の姿勢に疑問を抱き始めた和久は、彼の些細な行動に不自然な点を数多く発見すると、恐るべき疑念が頭の中を渦巻くようになる。

 

兄は本当に、血の繋がった兄弟なのか。

 

27年前、中国残留孤児として日本に帰国した兄。
当時、主人公は失明していため、彼の姿をその目で見ることはできなかった。

 

兄の真実を探るため、主人公は独自の調査を開始するが、様々な関係者の証言を聞く内に、徐々に目には見えない深い闇に飲まれていく。

 

物語をどれだけ読み進めようと、まるで真っ暗闇の中を歩いているかのように、真実の輪郭さえ輪郭さえ見ることは出来ない。その先の見えない恐ろしさが、より劇中内での緊迫感を増幅させていた。

 

また、この作品では、目の見えない人の所作や行動がつぶさに描かれている。光の無い世界で音を頼りに生活する様子、街を歩く際の不安、そして、そんな彼が生きていかなければならない周りの環境が、どこまでもリアルに映し出される。

 

そして、待ち受けるのは予想もできない真実。
物語の背景に流れる歴史をもっと知りたくなった。

 

では次回。