171.か「」く「」し「」ご「」と「/住野よる
「皆、何を知って色んな人を好きになるんだろう」(p.10)
少しだけ特別な力を持った5人の高校生は、そのせいでお互いへの気持ちに戸惑いながらも、自らの気持ちと向き合って一歩を踏み出す、住野よるの青春小説。
息をするのが苦しくなるくらいの清涼感。
流れる映像が全部、パステルカラーで再現される。と言うか、再現して欲しい誰か。
この物語に登場する5人の高校生は、それぞれ他人には秘密にしている、ちょっとした特別な力を持っている。
それは、決して他の人をどうにかすることはできないけれど、周りの人間関係をほんの少しだけ覗き見ることができる、不思議な力。
気が弱くて本音を言い出せない男の子も、ヒーローになりたいと夢見る女の子も、恋の行方を見守る女の子も、そんな力を騒ぎ立てることなく隠し持ちながら、何気ない学生生活を送っていた。
しかし、行動のきっかけとなる不思議な力は、彼らの想いや気持ちを意地悪に動かす時もあれば、素直な感情を引き出す時もあって、少しづつ5人の心の距離を縮めていく。
彼らの「かくしごと」が章を読み進めていくごとに明かされていくと、次は何が来るのかとワクワクしてしまうぐらいバラエティに富んでいて、個性溢れるキャラクターが過ごす日々を鮮やかに彩っていた。
読んでいると、人物たちの想いが向く矢印があっちこっちへと飛び跳ねていく様子が頭に浮かんできて、心なしか顔がほころんでしまう。
あと個人的に、それぞれの章の締めの一文が、どれも住野よるらしさに溢れていて好きだったな。