175.少女/湊かなえ
死は究極の罰ではない。ならば、死とは何だ。(p.118)
人が死ぬ瞬間を見たいと願った二人の少女は、互いにすれ違いながら、それぞれが思い描く「死」と言う存在に立ち向かっていく、湊かなえの長編小説。
親友の自殺を目撃したと語る転校生の告白を聞いた高校生の由紀と敦子は、暗い過去の記憶を思い出しながら「死」について考えを巡らす。
その後、二人の少女は夏休みの間、死の瞬間を目撃するために「死」の匂いが色濃く漂う老人ホームと小児科病棟へ、互いには秘密にしながら訪れる。
そして、別々の場所で「死」に立ち会うため、躍起になっていた彼女たちは、やがて思いもよらぬ形で自らが隠していた気持ちを目の当たりにする。
この物語で描かれる少女たちの心情が透明で澄み切っているはずもなくて、奥底に満ちた妬みや嫉みさえも、物語が進むごとに洗いざらい暴かれていく。
しかし、そんな不純な心情から目を背けたくなるのと同じくらい、彼女たちが秘める純粋な気持ちを無視することはできなかった。悪意だけで人を塗り固めることはできないのだと、改めて思い知らされる。
また、湊さんの物語では有象無象のように思えた登場人物たちが、突然、輪郭をなして目の前に立ち塞がってくる。
そして、それは最後の最後で、そっと鳩尾に落とされた鉛玉のように、心の奥底に飲み込めない澱みを残しつつ、確実に物語の幕は落とされる。
「イヤミス」と呼ばれるジャンルが苦手だったけど、湊さんが作り上げた後をひく生々しい余韻は、おぞましくも残酷で、それでいて一抹の儚さを感じることができる。
では次回。