十一月二十二日、日曜日、大安。大安は、六輝の中で何事においても全て良く、成功しないことはないとされる。だけど、大安はただそれだけでは実現しない。それを可能にするのは私たちだ。(p.222)
大安の日に結婚式を挙げる4組のカップルが集うホテルで、ウェディングプランナーである主人公は式を成功へと導くために奮闘する、辻村深月の長編小説。
何をするにも縁起が良いと伝えられている大安の日。
ホテル・アールマティでは、4組のカップルを新郎新婦として華やかに祝福するべく、それぞれの結婚式の準備に追われていた。
しかし、その裏では美人双子姉妹が秘密の計画を企んでいたり、新婦が身につけるはずのカチューシャが紛失したり、あやしい男がホテル内を彷徨いていたりと、様々な思惑が式場内を飛び交っていた。
そんな事とはつゆ知らず、ウェディングプランナーである主人公の女性は、クレーマー気質の新婦にあれこれと文句をぶつけられながらも、結婚式が上手くいくようにとその行方を見守る。
結婚式が粛々と進んでいく中で、様々な人物たちの思惑はやがて、思わぬ事態が引き鉄となってあちこちに飛び火するかのように解き放たれることになる。
一日のみの煌びやかな式典。その日だけのため、多くの人々によって準備や労力がかけられることに、疑問を感じる人もいるのかもしれない。
ただ、そのたった一日を、人生の中で最も幸福で溢れる日にするために、ウェディングプランナーが、式場のスタッフが、そして新郎新婦たちが入念な打ち合わせを重ね、集ってくれる人々に幸せを分け与えられるような式をつくりあげる。
一人だけの力では実現しない、その場所に集った人々の思いが集結して初めて結婚式は完成するのだと、この小説を読んで改めて思い知らされた。
また、登場人物たちの人となりや行動に至るまでの背景を、ストーリーに寄り添いながら丁寧に描いてくれるのが辻村さんの小説の好きなところ。
個人的に、大好きなお姉さんのために決意する
真空少年のひたむきな想いにグッとくる。
では次回。