カタコトニツイテ

ゆる~い本の感想と紹介をしています。想うこともつらつらと。

「タルト・タタンの夢/近藤史恵」の感想と紹介

181.タルト・タタンの夢/近藤史恵

 

白い皿の上で、アイスクリームは静かに溶けていく。
まるで、魔法が解けるように。(p.48)

 

商店街にひっそりと佇むフレンチ・ビストロで起こるちょっと不思議な出来事は、無口なシェフの手によって鮮やかに紐解かれる、近藤史恵短編ミステリ。

 

小さなフレンチレストラン「ビストロ・パ・マル」では、気取った特別な料理やフルコースではなく、本場フランスの家庭料理を中心とした素朴な味を楽しむことができる。

 

そんな場所で従業員として働く主人公は、俳句好きでワインソムリエの女性高級ホテルでスーシェフをしていたコックなど、愉快な面々とともに店を切り盛りしていた。

 

しかし、そんなフレンチ・ビストロに訪れた人々は、素敵な料理に舌鼓を打ちながらも、ささやかな謎を店に残して去っていくこともある。

 

妻の作ったタルト・タタンを食べてお腹を壊した男、鵞鳥のカスレをわざわざ食べたいと希望する女性、割り切れない数のチョコレートを販売するショコラティエ

 

何だか腑に落ちない、頭の隅に引っ掛かるような謎は、ビストロで振る舞われる魅惑の料理と共に、それら全てを作り上げる、侍のような見た目をした無口なシェフによって紐解かれていく。

 

物語の中では、馴染みのないフランス料理の数々がいくつも登場するけれど、そのどれもが思わず食べてみたくなるぐらい魅力的に描かれていて、豊富なフレンチの知識に驚かされながらも、ふらっとレストランに立ち寄りたくなる誘惑に駆られる。

 

こんなビストロが家の近くにあったなら、きっと常連になって通いたくなるんだろうなと思う。ちなみに、まだフレンチを食べたことは人生で一度もない。

 

では次回。