カタコトニツイテ

頭のカタスミにあるコトバについて。ゆる~い本の感想と紹介をしています。

「麦本三歩の好きなもの 第二集/住野よる」の感想と紹介

197.麦本三歩の好きなもの 第二集/住野よる

 

嫌なこともしんどいことも問題にならないほど大切な、世界からのご褒美が贈られる。それは、数えきれないほどの、好きなもの。(p.13)

 

図書館に勤める20代女子、麦本三歩の自由気ままで他愛のない日常を描いた、住野よる短編小説。の続編。

 

たくさんの好きなものに囲まれながら、日々の幸せを甘々に受け止めつつ、時には失敗して落ち込むことはあれど、友人や職場の先輩に励まされて事なきを得る。

 

実際のところ、普通の人が過ごす日常とさして変わりはないのかもしれない。

 

けれど、そんな取り留めのない日常も彼女の目から見れば、感情があっちこっちへお出かけしては、多彩な言葉が飛び交う毎日へと生まれ変わっていく。

 

そして、この続編では、そんな欲望に素直に忠実かつ、欲も望も暴れ回っている三歩と関わる賑やかな面々にちょっとした変化が起こり始める。

 

真面目な後輩ができたり、生活が謎に包まれたお隣さんとコミュニケーションを取ろうとしたり、自身に興味がありそうな年上の男性と外に出かけたり。

 

人間関係の変化に戸惑う三歩を眺めつつ、彼女の好きなものが詰め込まれた円が、ふと身近なものにまで広がると、途端に特別な日常を共有しているような気持ちになれる。

 

個人的に、三歩の日常にはちょうど良い塩梅の堕落感がある気がする。楽しいことばかりに浮かれている時もあれば、ちゃんと現実に不安を感じる場面もある。

 

それは誰にでもある感情で、心の奥底に眠らせているものなのかもしれない。
ただ、三歩が少しばかりおっちょこちょいで、思考がアクロバティックなだけで。

 

では次回。