カタコトニツイテ

ゆる~い本の感想と紹介をしています。想うこともつらつらと。

「六人の嘘つきな大学生/浅倉秋成」の感想と紹介

150. 六人の嘘つきな大学生/浅倉秋成

 

誰もが胸に『封筒』を隠している。
それを悟られないよう、うまく振る舞っているだけ。(p.234)

 

瞬く間に世間の羨望を集めたベンチャー企業の最終選考に残った六人の就活生は、内定を賭けた最後の議論の場で嘘と欺瞞に塗れた事件に巻き込まれていく、浅倉秋成の長編小説。

 

今年の本屋大賞候補作を読むのは、この作品で四作目。
緊迫した展開と見事な伏線回収。想像してたものと少し違った読後感だった。

 

目下、成長著しいIT企業「スピラリンクス」が満を辞して募集を開始した新卒採用の狭き門を潜るべく、数々の選考を乗り越えて残った六人の就活生たちは、最後の課題であるグループディスカッションに向けて交流を深めていく。

 

誰もが自らの能力を遺憾無く発揮し、チームとして一つになりかけてた彼らだったが、本番直前に通達されたのは「六人の中でから一人だけを採用する」という非情な決定だった。

 

打って変わってライバル同士になった彼らは戸惑いながらも冷静に議論を交わしていくが、一つの謎の封筒が契機となり、それぞれの罪と嘘が明らかになる。

 

登場人物たちは、それぞれが隠していた一側面を巡って、誰かを疑い、自らを庇う。

 

二転三転して紛糾する議論の行方と隠された真実が明らかになった時、自分がこれまで見ていた出来事からかけ離れた結末に驚愕する一方で、どこか腑に落ちる瞬間があった。

 

人はなぜか「自分から見えているもの」がその人の全てだと錯覚して、事実も人格も言葉も、何もかもを分かったように振る舞ってしまう。実際のところ、それが表なのか裏なのかすら分かっていないにも関わらず。

 

でも、そうやってふと現れた人の一面が表か裏かを見破れる人なんてこの世に存在しなくて、もしかしたら本人にだって分からない。

 

それならば、自分の見ている側面が表か裏か断定しようと躍起になること自体、意味の無いことなのかもしれない。

 

それにしても、読んだのが就活を経験してからで良かった。
何にも信じられなくなるところだった。危なかった。

 

では次回。