カタコトニツイテ

頭のカタスミにあるコトバについて。ゆる~い本の感想と紹介をしています。

「滅びの前のシャングリラ/凪良ゆう」の感想と紹介

238.滅びの前のシャングリラ/凪良ゆう 愛情はどうしても平等には振り分けれらず、それぞれの心に沿った自由な選択があるだけだ。(p.95) 滅びの前のシャングリラ (中公文庫) 作者:凪良ゆう 中央公論新社 Amazon 平和に見える世界でひっそりと絶望していた登…

「傲慢と善良/辻村深月」の感想と紹介

237.傲慢と善良/辻村深月 しかし、この世の中に、「自分の意思」がある人間が果たしてどれだけいるだろう(p.283) 傲慢と善良 (朝日文庫) 作者:辻村 深月 朝日新聞出版 Amazon 結婚式を目前に控えていたなか、突然、姿を消した婚約者のゆくえを探す渦中で浮…

「鏡の国/岡崎琢磨」の感想と紹介

236.鏡の国/岡崎琢磨 「いつかは失われるもの、いつかは失われるとわかっているものに、決して自分の一番の価値を置いてはいけないのです」(p.272) 鏡の国 作者:岡崎 琢磨 PHP研究所 Amazon 大御所ミステリー作家の遺稿から削除されたエピソードをめぐって…

「水車小屋のネネ/津村記久子」の感想と紹介

235.水車小屋のネネ/津村記久子 「自分が元から持っているものはたぶん何もなくて、そうやって出会った人が分けてくれたいい部分で自分はたぶん生きてるって。」(p.438) 水車小屋のネネ 作者:津村 記久子 毎日新聞出版 Amazon 家庭の事情から家を飛びだし…

「厭魅の如き憑くもの/三津田信三」の感想と紹介

234.厭魅の如き憑くもの/三津田信三 「__要は、不可思議な現象というものは、白か黒かが分からないこそ謎なのであり、また怖かったり不気味だったりするわけだろ。それをどちらかに決め付けてしまうのは、余りにもナンセンスだと思うんだ」(p.295) 厭魅…

「青くて痛くて脆い/住野よる」の感想と紹介

233.青くて痛くて脆い/住野よる 認めることができたし、信じたんだと思う。理想や、真実を追い求める彼女の青さや痛さを、自分が持っていない人間性として。(p.32) 青くて痛くて脆い (角川文庫) 作者:住野 よる KADOKAWA Amazon 理想と現実に揺られながら…

「羊は安らかに草を食み/宇佐美まこと」の感想と紹介

232.羊は安らかに草を食み/宇佐美まこと 「僕らが『世界』だと信じているものはそれほど確たるものだろうか?」(p.85) 羊は安らかに草を食み 作者:宇佐美まこと 祥伝社 Amazon 認知症を患った女性が歩む人生の足跡を辿る最後の旅と、彼女が戦時中、命を晒…

「レーエンデ国物語 喝采か沈黙か/多崎礼」の感想と紹介

231.レーエンデ国物語 喝采か沈黙か/多崎礼 辛いだけの記憶なら忘れてしまったほうがいい。だが辛すぎる記憶は癒えることのない傷になる。忘れたくても忘れられない。(p.140) レーエンデ国物語 喝采か沈黙か 作者:多崎礼 講談社 Amazon 聖都の下町にある劇…

「西洋菓子店プティ・フール/千早茜」の感想と紹介

230.西洋菓子店プティ・フール/千早茜 あの時に抱いた感情の名前を私はずっと探している。(p.36) 西洋菓子店プティ・フール (文春文庫) 作者:千早 茜 文藝春秋 Amazon 下町で営まれる昔ながらの西洋菓子店「プティ・フール」を中心に、様々な事情を抱える…

「君が手にするはずだった黄金について/小川哲」の感想と紹介

229.君が手にするはずだった黄金について/小川哲 昔話というのは車窓の景色のように一瞬で流れ去るから面白いのであって、現場まで立ち戻って仔細に検討したらどんどん粗が見えてきてつまらなくなる(p.187) 君が手にするはずだった黄金について 作者:小川…

「あすは企業日/森本萌乃」の感想と紹介

228.あすは企業日/森本萌乃 グラデーションの始まりが、いつだって混じり気のない単色であるように。(p.11) あすは起業日! 作者:森本萌乃 小学館 Amazon スタートアップの会社で突然、クビを宣告させられた主人公の女性は、かつて抱いていた起業の夢を思…

「眠れない夜は体を脱いで/彩瀬まる」の感想と紹介

227.眠れない夜は体を脱いで/彩瀬まる 次に目を開けたとき、世界は夜になっていた。(p.147) 眠れない夜は体を脱いで (中公文庫) 作者:彩瀬まる 中央公論新社 Amazon 一つのネット掲示板に寄せられた投稿が、自身の心に漂っていた違和感をそっと掬いあげて…

「ことり/小川洋子」の感想と紹介

226.ことり/小川洋子 どんなに形の違う小石でも、一緒にポケットに入れておくうち、不思議と馴染んでくるものだとよく知っていたからだ(p.35) ことり (朝日文庫) 作者:小川 洋子 朝日新聞出版 Amazon 小鳥の言葉を理解する兄と、ただ一人兄の言葉を理解す…

「クジラアタマの王様/伊坂幸太郎」の感想と紹介

225クジラアタマの王様/伊坂幸太郎 音も聞こえず、広く、美しい青空が見えるだけであるから、本当にやってくるのだろうか、と不安になるほどだが、もちろんそれは、恐怖から目を逸らしたいからでもあった。(p.58) クジラアタマの王様(新潮文庫) 作者:伊…

「星降り山荘の殺人/倉知淳」の感想と紹介

224.星降り山荘の殺人/倉知淳 頭上には、降るような星の光が満ち満ちていた。(p.164) 新装版 星降り山荘の殺人 (講談社文庫) 作者:倉知淳 講談社 Amazon 雪に閉ざされた山荘で起こった殺人事件は、閉じ込められた一癖も二癖もある登場人物たちに対して、思…

「電気じかけのクジラは歌う/逸木裕」の感想と紹介

223.電気じかけのクジラは歌う/逸木裕 __音楽の本質は、波及なんだ。空港のように、僕やみんなの中には色々な音楽が溜まっている。いままでに影響を受けてきた色々なものから、新しいものを再構築する。そうやって芸術は波及していく。(p.47) 電気じかけ…

「神楽坂スパイスボックス/長月天音」の感想と紹介

222.神楽坂スパイスボックス/長月天音 「きっと、私がスパイス料理に勇気づけられたからかもしれませんね。私にとって、スパイスは、魔法の粉なんです」(p.57) 神楽坂スパイス・ボックス (ハルキ文庫) 作者:長月天音 角川春樹事務所 Amazon 神楽坂の路地で…

「ノウイットオール あなただけが知っている/森バジル」の感想と紹介

221.ノウイットオール あなただけが知っている/森バジル 「この世界のこと一切もれなくぜーんぶ知るまでは、誰に何言ったって知ったかぶりだよ」(p.140) ノウイットオール あなただけが知っている (文春e-book) 作者:森 バジル 文藝春秋 Amazon とある街を…

「透明な夜の香り/千早茜」の感想と紹介

220.透明な夜の香り/千早茜 「香りは脳の海馬に直接届いて、永遠に記憶されるから」(p.55) 透明な夜の香り (集英社文庫) 作者:千早茜 集英社 Amazon 古い洋館で家事手伝いをすることになった主人公は、その場所で客の望む香りを自在に作りだす調香師として…

「リボルバー/原田マハ」の感想と紹介

219.リボルバー/原田マハ 「絵を描いたその場所に、その絵は残らない。生産する場所と消費する場所は一致しないのは世の常です」(p.96) リボルバー (幻冬舎文庫) 作者:原田マハ 幻冬舎 Amazon パリのオークションに持ちこまれた、ゴッホの自殺に使われたと…

「レーエンデ国物語 月と太陽/多崎礼」の感想と紹介

218.レーエンデ国物語 月と太陽/多崎礼 ならばもう忘れてしまおう。両親のことも、恐ろしい夜のことも、忘れてしまおう。(p.50) レーエンデ国物語 月と太陽 作者:多崎礼 講談社 Amazon 屋敷から逃げだした名家の少年は、辿りついた村で出会った少女ととも…

「不可逆少年/五十嵐律人」の感想と紹介

217.不可逆少年/五十嵐律人 「やり直せるから、少年なんだよ」(p.23) 不可逆少年 (講談社文庫) 作者:五十嵐 律人 講談社 Amazon 幼い少女が起こした重大な事件が発端となり、登場人物たちが抱えてきた過去の傷が新たな事件を巻き起こしていく、五十嵐律人…

「彼らは世界にはなればなれに立っている/太田愛」の感想と紹介

215.彼らは世界にはなればなれに立っている 「おまえの行為によって世界が変わることはない。なにかすることで、おまえ自身が変わることはあってもな」(p.122) 彼らは世界にはなればなれに立っている (角川文庫) 作者:太田 愛 KADOKAWA Amazon 人々が文明を…

「スモールワールズ/一穂ミチ」の感想と紹介

216.スモールワールズ/一穂ミチ 退屈な教科書の文章みたいに単純な情報として丸飲みし、解釈も深読みも加えないでほしい。自分の人生を、物語みたいに味わわれたくない。(p.302) スモールワールズ (講談社文庫) 作者:一穂ミチ 講談社 Amazon 様々な人間関…

「レーエンデ国物語/多崎礼」の感想と紹介

214.レーエンデ国物語/多崎礼 革命の話をしよう。歴史のうねりの中に生まれ、信念のために戦った者達の夢を描き、未来を信じて死んでいった者達の革命の話をしよう。(p.10) レーエンデ国物語 作者:多崎礼 講談社 Amazon 呪われた土地と呼ばれるレーエンデ…

「告白/湊かなえ」の感想と紹介

213.告白/湊かなえ 愛美は事故で死んだのではなく、このクラスの生徒に殺されたからです。(p.29) 告白 (双葉文庫) 作者:湊かなえ 双葉社 Amazon 幼い娘を校内で亡くした女性教師は、娘は事故ではなく生徒に殺されたのだと告白する、湊かなえのデビュー作と…

「世界でいちばん透きとおった物語/杉井光」の感想と紹介

212.世界でいちばん透きとおった物語/杉井光 「燈真さんは、言葉で心臓を刺せる人ですね」(p.105) 世界でいちばん透きとおった物語 (新潮文庫 す 31-2) 作者:杉井 光 新潮社 Amazon 大御所ミステリ作家が遺した未発表の小説のありかを、彼の息子である主人…

「独白するユニバーサル横メルカトル/平山夢明」の感想と紹介

211.独白するユニバーサル横メルカトル/平山夢明 私は小は道路地形から大は島の位置までを網羅した単なる地図なのでございます。(p.226) 独白するユニバーサル横メルカトル (光文社文庫) 作者:平山 夢明 光文社 Amazon タクシー運転手を主人とする一冊の道…

「サーチライトと誘蛾灯/櫻田智也」の感想と紹介

210.サーチライトと誘蛾灯/櫻田智也 枝になりたいという強い願いなくして、あのような姿に到達できるとはとても考えられません。ぼくはそのうち、ナナフシは本物の樹になってしまうだろうと思っています。(p.125) サーチライトと誘蛾灯 (創元推理文庫) 作…

「レモンと殺人鬼/くわがきあゆ」の感想と紹介

209.レモンと殺人鬼/くわがきあゆ 十歳の私にとってはまだ父が世界の中心だった。そして、その世界は絶対に温かかったのだ。(p.96) レモンと殺人鬼 (宝島社文庫) 作者:くわがきあゆ 宝島社 Amazon 憂鬱な日々を送っていた主人公は、同じように質素な生活を…