カタコトニツイテ

頭のカタスミにあるコトバについて。ゆる~い本の感想と紹介をしています。

「ツナグ/辻村深月」の感想と紹介

255.ツナグ/辻村深月 残されて生きる者は、どうしようもないほどにわがままで、またそうなるしかない。それがたとえ、悲してくても、図太くても。(p.416) ツナグ(新潮文庫) 作者:辻村深月 新潮社 Amazon 一生に一度だけ、生きている者と死者を再会させる…

「シャイロックの子供たち/池井戸潤」の感想と紹介

254.シャイロックの子供たち/池井戸潤 胸に抱いていた悩みか、怒りか、はたまた絶望か。そんな、割り切れず、はけ口もない感情があったはずだ。(p.168) シャイロックの子供たち 作者:池井戸 潤 文藝春秋 Amazon とある銀行の支店で起こった不可解な現金紛…

「星を掬う/町田そのこ」の感想と紹介

253.星を掬う/町田そのこ 「千羽鶴みたいじゃないですか。綺麗なだけで何も救わない」(p.23) 星を掬う (中公文庫) 作者:町田そのこ 中央公論新社 Amazon 元夫の暴力から逃れるため、かつて自分を捨てた母が住む家へと越してきた女性は、ほかの住人たちとと…

「白夜行/東野圭吾」の感想と紹介

252.白夜行/東野圭吾 「俺の人生は、白夜の中を歩いているようなものやからな」(p.436) 白夜行 (集英社文庫) 作者:東野圭吾 集英社 Amazon 大阪の廃墟ビルで起きたひとつの事件を契機に、被害者の息子と容疑者の娘の人生は大きく変動する、東野圭吾の長編…

「まち/小野寺史宜」の感想と紹介

251.まち/小野寺史宜 お前を頼った人は、お前をたすけてもくれるから。たすけてはくれなくても、お前を貶めはしないから(p.183) まち(祥伝社文庫お25-4) (祥伝社文庫 お 25-4) 作者:小野寺史宜 祥伝社 Amazon 両親を亡くして歩荷を営む祖父に育てられた主…

「コンビニ人間/村田沙耶香」の感想と紹介

250.コンビニ人間/村田沙耶香 私は世界の部品になって、この「朝」という時間の中で回転し続けている。(p.6) コンビニ人間 (文春文庫) 作者:村田 沙耶香 文藝春秋 Amazon 大学卒業後も就職することなく、コンビニエンスストアでアルバイトを続ける女性の生…

「爆弾/呉勝浩」の感想と紹介

249.爆弾/呉勝浩 思考が真っ黒になり、真っ白になった(p.276) 爆弾【電子限定特典付き】 (講談社文庫) 作者:呉勝浩 講談社 Amazon 東京全土を揺るがす連続爆発事件。その犯人と思われる人物の言動に翻弄されながらも、都民を救うために警察は必死で奔走す…

「忘れられた巨人/カズオ・イシグロ」の感想と紹介

248.忘れられた巨人/カズオ・イシグロ それに、おまえへの想いは、わたしの心の中にちゃんとある。何を思い出そうと、何を忘れようと、それだけはいつもちゃんとある。(p.74) 忘れられた巨人 作者:カズオ イシグロ 早川書房 Amazon 古のグレートブリテン島…

「宵山万華鏡/森見登美彦」の感想と紹介

247.宵山万華鏡/森見登美彦 どうかこの今の怖い思いが、ほかの思い出と同じように楽しいものになりますようにと彼女は願った。(p.31) 宵山万華鏡 (集英社文庫) 作者:森見登美彦 集英社 Amazon 祇園祭が行われる宵山を舞台に、不思議な出来事と現実の事件が…

「箱男/安部公房」の感想と紹介

246.箱男/安部公房 むろん箱から出るだけなら、なんでもない。なんでもないから、無理に出ようとしないだけのことである。ただ、出来ることなら、誰かに手を貸してほしいと思うのだ。(p.82) 箱男(新潮文庫) 作者:安部公房 新潮社 Amazon 段ボール箱を頭…

「君が夏を走らせる/瀬尾まいこ」の感想と紹介

245.君が夏を走らせる/瀬尾まいこ 恋なんてふんわりしたものとは違う、もっと体の奥から湧き出てくる力強い気持ち。今まで知らなかったそんな気持ちが、俺の心を弾ませ揺すぶり動かしている。(p.156) 君が夏を走らせる(新潮文庫) 作者:瀬尾まいこ 新潮社…

「死神の精度/伊坂幸太郎」の感想と紹介

244.死神の精度/伊坂幸太郎 以前、機会があって映画を観たのだが、そこでは、「天使は図書館に集まる」と描かれていた。なるほど、彼らは図書館なのか、と感心した。私たちはCDショップだ。(p.26) 死神の精度 (文春文庫) 作者:伊坂 幸太郎 文藝春秋 Amazon…

「テスカトリポカ/佐藤究」の感想と紹介

243.テスカトリポカ/佐藤究 新しい太陽は新しい影を作り、新しい闇をもたらす。(p.186) テスカトリポカ (角川文庫) 作者:佐藤 究 KADOKAWA Amazon さまざまな血塗られた思惑を抱えながら生き長らえた無法者たちは、新たな臓器ビジネスを立ちあげるために日…

「冬季限定ボンボンショコラ事件/米澤穂信」の感想と紹介

242.冬季限定ボンボンショコラ事件/米澤穂信 「すごい。こんなにまっすぐな方法。わたし、思いつかなかった。まるで」(p.283) 冬期限定ボンボンショコラ事件 〈小市民〉シリーズ (創元推理文庫) 作者:米澤 穂信 東京創元社 Amazon ある日、小市民を志す少…

「三体/劉 慈欣」の感想と紹介

241.三体/劉 慈欣 「では、先生のこれまでの人生は幸運だったわけだ。世界には予測不可能な要素があふれているのに、一度も危機に直面しなかったのだから」(p.101) 三体 (ハヤカワ文庫SF) 作者:劉 慈欣 早川書房 Amazon 謎の学術団体に潜入することになっ…

「水を縫う/寺地はるな」の感想と紹介

240.水を縫う/寺地はるな 時折、ぎゅっと目をつむった。おさない頃のように。涙はこぼれる前にとめなければならない。こぼれたらあとはもう、とめどなくあふれてきてしまうから。(p.150) 水を縫う (集英社文庫) 作者:寺地はるな 集英社 Amazon 何気なく放…

「恋と禁忌の術語論理/井上真偽」の感想と紹介

239.恋と禁忌の術語論理/井上真偽 大切なのは、各命題を真偽の検証が可能な粒度まで落としこむこと。(p.123) 恋と禁忌の述語論理 (講談社文庫) 作者:井上真偽 講談社 Amazon もうすでに解決されたはずの事件に対して、天才数理論理学者の彼女は検証によっ…

「滅びの前のシャングリラ/凪良ゆう」の感想と紹介

238.滅びの前のシャングリラ/凪良ゆう 愛情はどうしても平等には振り分けれらず、それぞれの心に沿った自由な選択があるだけだ。(p.95) 滅びの前のシャングリラ (中公文庫) 作者:凪良ゆう 中央公論新社 Amazon 平和に見える世界でひっそりと絶望していた登…

「傲慢と善良/辻村深月」の感想と紹介

237.傲慢と善良/辻村深月 しかし、この世の中に、「自分の意思」がある人間が果たしてどれだけいるだろう(p.283) 傲慢と善良 (朝日文庫) 作者:辻村 深月 朝日新聞出版 Amazon 結婚式を目前に控えていたなか、突然、姿を消した婚約者のゆくえを探す渦中で浮…

「鏡の国/岡崎琢磨」の感想と紹介

236.鏡の国/岡崎琢磨 「いつかは失われるもの、いつかは失われるとわかっているものに、決して自分の一番の価値を置いてはいけないのです」(p.272) 鏡の国 作者:岡崎 琢磨 PHP研究所 Amazon 大御所ミステリー作家の遺稿から削除されたエピソードをめぐって…

「水車小屋のネネ/津村記久子」の感想と紹介

235.水車小屋のネネ/津村記久子 「自分が元から持っているものはたぶん何もなくて、そうやって出会った人が分けてくれたいい部分で自分はたぶん生きてるって。」(p.438) 水車小屋のネネ 作者:津村 記久子 毎日新聞出版 Amazon 家庭の事情から家を飛びだし…

「厭魅の如き憑くもの/三津田信三」の感想と紹介

234.厭魅の如き憑くもの/三津田信三 「__要は、不可思議な現象というものは、白か黒かが分からないこそ謎なのであり、また怖かったり不気味だったりするわけだろ。それをどちらかに決め付けてしまうのは、余りにもナンセンスだと思うんだ」(p.295) 厭魅…

「青くて痛くて脆い/住野よる」の感想と紹介

233.青くて痛くて脆い/住野よる 認めることができたし、信じたんだと思う。理想や、真実を追い求める彼女の青さや痛さを、自分が持っていない人間性として。(p.32) 青くて痛くて脆い (角川文庫) 作者:住野 よる KADOKAWA Amazon 理想と現実に揺られながら…

「羊は安らかに草を食み/宇佐美まこと」の感想と紹介

232.羊は安らかに草を食み/宇佐美まこと 「僕らが『世界』だと信じているものはそれほど確たるものだろうか?」(p.85) 羊は安らかに草を食み 作者:宇佐美まこと 祥伝社 Amazon 認知症を患った女性が歩む人生の足跡を辿る最後の旅と、彼女が戦時中、命を晒…

「レーエンデ国物語 喝采か沈黙か/多崎礼」の感想と紹介

231.レーエンデ国物語 喝采か沈黙か/多崎礼 辛いだけの記憶なら忘れてしまったほうがいい。だが辛すぎる記憶は癒えることのない傷になる。忘れたくても忘れられない。(p.140) レーエンデ国物語 喝采か沈黙か 作者:多崎礼 講談社 Amazon 聖都の下町にある劇…

「西洋菓子店プティ・フール/千早茜」の感想と紹介

230.西洋菓子店プティ・フール/千早茜 あの時に抱いた感情の名前を私はずっと探している。(p.36) 西洋菓子店プティ・フール (文春文庫) 作者:千早 茜 文藝春秋 Amazon 下町で営まれる昔ながらの西洋菓子店「プティ・フール」を中心に、様々な事情を抱える…

「君が手にするはずだった黄金について/小川哲」の感想と紹介

229.君が手にするはずだった黄金について/小川哲 昔話というのは車窓の景色のように一瞬で流れ去るから面白いのであって、現場まで立ち戻って仔細に検討したらどんどん粗が見えてきてつまらなくなる(p.187) 君が手にするはずだった黄金について 作者:小川…

「あすは企業日/森本萌乃」の感想と紹介

228.あすは企業日/森本萌乃 グラデーションの始まりが、いつだって混じり気のない単色であるように。(p.11) あすは起業日! 作者:森本萌乃 小学館 Amazon スタートアップの会社で突然、クビを宣告させられた主人公の女性は、かつて抱いていた起業の夢を思…

「眠れない夜は体を脱いで/彩瀬まる」の感想と紹介

227.眠れない夜は体を脱いで/彩瀬まる 次に目を開けたとき、世界は夜になっていた。(p.147) 眠れない夜は体を脱いで (中公文庫) 作者:彩瀬まる 中央公論新社 Amazon 一つのネット掲示板に寄せられた投稿が、自身の心に漂っていた違和感をそっと掬いあげて…

「ことり/小川洋子」の感想と紹介

226.ことり/小川洋子 どんなに形の違う小石でも、一緒にポケットに入れておくうち、不思議と馴染んでくるものだとよく知っていたからだ(p.35) ことり (朝日文庫) 作者:小川 洋子 朝日新聞出版 Amazon 小鳥の言葉を理解する兄と、ただ一人兄の言葉を理解す…