249.爆弾/呉勝浩
思考が真っ黒になり、真っ白になった(p.276)
東京全土を揺るがす連続爆発事件。その犯人と思われる人物の言動に翻弄されながらも、都民を救うために警察は必死で奔走する、呉勝浩の長編ミステリ。
障害の容疑で逮捕された男、スズキタゴサク。
冴えない見た目と違わない、自嘲的な発言。
しかし、刑事による取り調べのさなか、霊感による爆発の予言が的中したことで、彼を取り巻く状況は一変する。
さらには、次々と彼の予言どおりに爆発が起こり、スズキタゴサクは国がかざす正義を逆撫でする言動を繰り返しては、東京を恐怖の色に染めていく。
警察も人を変えながら、あの手この手で彼の正体と爆弾のありかを暴こうとするが、どんな言葉も感触のないまま、彼の体をすり抜けていってしまう。
社会から弾かれたことで、警察を皮肉めいた言動で嘲笑う。
間違いなく、悪意に満ちていると言いきれるほどの男。
それなのに、真っ黒としか思えない被疑者を完膚なきまでに否定できないのは、彼の言動が潔白とは言い切れない心を、数滴の後ろめたさで濁らせるからだ。
今まで読んだ小説のなかでも特に印象に残る悪役ではあったけれど、まさか続編が出るとは思わなかった。
では次回。