カタコトニツイテ

頭のカタスミにあるコトバについて。ゆる~い本の感想と紹介をしています。

「ことり/小川洋子」の感想と紹介

226.ことり/小川洋子

 

どんなに形の違う小石でも、一緒にポケットに入れておくうち、不思議と馴染んでくるものだとよく知っていたからだ(p.35)

 

小鳥の言葉を理解する兄と、ただ一人兄の言葉を理解する弟、2人の兄弟の慎ましくも儚い一生を描いた、小川洋子の長編小説。

 

人の言葉を話すことができない兄は、鳥のさえずりと呼応するように会話をすることができた。そして、そんな兄の言葉を理解することができたのは、弟ただ一人だった。

 

誰にも理解されない言葉を不自由に思うことなく、小鳥たちと戯れながら生活する兄を、弟はひっそりと支えながらともに暮らしていく。

 

やがて、兄は亡くなり、弟は園の鳥の世話をするうちに周りの人々から「小鳥の小父さん」と呼ばれるようになる。

 

時の流れが加速するにつれて、浮き彫りになっていく孤独感人とのつながりを無意識に求める姿と、そんな彼に寄り添う小鳥たちの関係性が印象深く刻まれた。

 

小川洋子さんは寂しさに何通りもの姿があることを知っていて、文章を通して端正にその形を描きわけることができる。

 

そして、そんな特別な寂しさであっても、同じような言葉で一括りにされてしまうことに、また寂しさを覚えてしまった。

 

では次回。