カタコトニツイテ

頭のカタスミにあるコトバについて。ゆる~い本の感想と紹介をしています。

「あすは企業日/森本萌乃」の感想と紹介

228.あすは企業日/森本萌乃

 

グラデーションの始まりが、いつだって混じり気のない単色であるように。(p.11)

 

スタートアップの会社で突然、クビを宣告させられた主人公の女性は、かつて抱いていた起業の夢を思いだし行動を始めていく、森本萌乃の長編小説。

 

オンライン選書サービスとマッチングシステムを融合させた「Chapters」を立ち上げた森本さんの実体験をベースに描かれた物語でもある。

 

コスメ業界のスタートアップで働いていた主人公は、29歳にしてクビを言い渡されてしまうが、ずっと心の底に漂っていた起業への憧れの気持ちを思いだす。

 

昔から好きだった本をテーマに、AIを使った選書サービスを提供するビジネスを始めようと思いつくも、投資家やVC(ベンチャーキャピタル)からの評判は芳しいものではなかった。

 

それでも、好きの気持ちと熱意を武器に、これまで出会ってきた人々を頼りに、少しづつ夢見た起業に向けて突き進んでいく。

 

新しいチャレンジにワクワクする気持ちと先の見えない不安が混ざった主人公の想いが、作者の実体験を伴ってリアルに伝わってきた。

 

加えて、起業に関するビジネス用語がていねいな解説とともに多く登場するので、会社経営やお金の勉強にもなった。

 

好きなものは、軽く決心を抱かせてしまうくらい突発的な魔力があって、それと同時にどん底に落ちたときでもギリギリで自分を支えてくれるものでもある。

それを、あらためて実感する物語だった。

 

では次回。