カタコトニツイテ

頭のカタスミにあるコトバについて。ゆる~い本の感想と紹介をしています。

「独白するユニバーサル横メルカトル/平山夢明」の感想と紹介

211.独白するユニバーサル横メルカトル/平山夢明

 

私は小は道路地形から大は島の位置までを網羅した単なる地図なのでございます。(p.226

 

タクシー運転手を主人とする一冊の道路地図帳が語り手を務める表題作を始め、残酷でおぞましい物語が綴られる平山夢明短編ホラー

 

まず、タイトルのセンスがずばぬけている。
独白するユニバーサル横メルカトルなんて言葉は一生かけても思いつかない。

 

自らが目の当たりにしてきた鬼畜な所業を、淡々とした口調で語る地図帳が主人公という荒唐無稽な話の他にも、SFサイコスリラー童話のような世界観の物語まで、多種多様な平山夢明作品が集められている。

 

そして、どの物語にも共通するのは凄惨で残虐な描写の数々と、独特な文体で綴られる登場人物たちの感情の起伏

 

あまりにも救いのない状況におかれた彼らは、投げやりな気持ちとは裏腹に、どこかで世界が変わる瞬間を待ちわびている。

 

永遠に続くと思われるほど悲愴感が漂う状況のなかで、ほのかな期待を持って進んでいく物語の結末に待ち受ける絶望的な最期は、読者もろとも奈落の底に突き落とすくらいの衝撃をもっていた。

 

最後の話は読んでいて、あまりのグロテスクな描写の連続に文章を直視できなかった。個人的には「無垢な祈り」が心に残っている。誰にとっての救いなのか、そもそも救いは存在しているのか。でも、美しいラストだと思った。

 

では次回。