親指が力を貸した人差し指は、難なく小指と寄り添うことができた。
「きっと、そういうことなんだと思いますよ」(p.240)
二人の中年詐欺師のもとに一人の少女が転がり込み、人生を懸けた大逆転計画を企てる話。
本作品では物語の随所で道尾秀介の真骨頂とも言える二転三転する大逆転劇が繰り広げられる。
すっと流してしまいそうな会話や文が伏線だったりするのだ。
登場する人物はそれぞれあまり過去を話す事はないが、生活を共にするにつれて奇妙な連帯感が生まれていく。
その中でも中年詐欺師であるテツさんとタケさんのテンポの良い会話が小気味よくて気持ちいい。
また、後に出てくるキャラも加わりわちゃわちゃ度が増すが、その団欒具合も妙にしっくりくるのだ。
物語は終盤に行くに従い、過去の亡霊や不穏な影が彼らに纏わりついてくる。
そんな敵との駆け引きや彼らが企てた「一世一代の大ペテン」には最後まで目が離せない。
道尾秀介作品の中では珍しく暗い雰囲気があまり漂わない人情ものになっており、読後感は心地よい。(もちろん暗い雰囲気の作品も好きなのだけど)
年代問わず楽しめる本なので、ぜひ手に取ってみてください。
では次回。