カタコトニツイテ

頭のカタスミにあるコトバについて。ゆる~い本の感想と紹介をしています。

「あと少し、もう少し/瀬尾まいこ」の感想と紹介

68.あと少し、もう少し/瀬尾まいこ

 

俺はハングリーではない。だけど、負けるにはいかない。(p.230)

 

あと少し、もう少し (新潮文庫)

あと少し、もう少し (新潮文庫)

 

 

所属している部活もばらばらの六人が中学最後の駅伝大会に向けて集められ、県大会出場のために襷を繋いでいく、瀬尾まいこ青春小説

 

陸上部部長の桝井はもともとの顧問が異動になったことで、自ら駅伝大会へ出場するためのメンバー集めを始める。

 

陸上部のメンバーを中心に、授業をさぼる不良の太田吹奏楽部に所属する渡部、頼みを断れないバスケ部のジローなど、個性豊かな仲間たちが揃った。

 

そんな中物語は、六人が駅伝大会の本番走る瞬間から、どのような想いでその場に立って走るのかがそれぞれ章ごとに回想されていく。

 

抱えている悩みは六人とも異なるし、走ることにかける思いも様々。

 

それでも彼らは、襷を受け取る人の気持ちを背負い、そして自分の想いを乗せた襷をまた次の区間の仲間に繋ぐ

 

決して三年間ずっと駅年大会に向けて練習してきた仲間ではないし、部活も性格もばらばらなはずなのに、襷を繋ぐもの繋がれるものには特別な関係が築かれていく。

 

特に渡部の心情に自分の中学生のころとかを重ねてしまう部分があって、なんだか感極まって読んでしまった。なんであんなに中学生って大人ぶってすかしちゃうんだろうな。

 

人は思っているよりも周りから見た印象と自らが抱く自分像は一致しないし、必死に悟られまいとするプライドみたいなものは些細な事でぐらぐらになってしまう。

 

物語の中で中学生である彼らが、走るというかけがえのない時間を通じて、これからの人生を生きていくための確固たる礎を手に入れたことが嬉しかった。

 

きっと読んだ人も、ぐらつきそうな心を支える何かを貰える物語だと思います。

 

では次回。