カタコトニツイテ

頭のカタスミにあるコトバについて。ゆる~い本の感想と紹介をしています。

「旅のラゴス/筒井康隆」の感想と紹介

67.旅のラゴス/筒井康隆

 

人間はただその一生のうち、自分に最も適していて最もやりたいと思うことに可能な限りの時間を充てさえすればそれでいい筈だ。(p.122)

 

旅のラゴス(新潮文庫)

旅のラゴス(新潮文庫)

 

 

高度な文明を失った代償に超能力を得ることができるようになった世界で、生涯をかけて旅をするラゴスの一生を描いたSF作品

 

時をかける少女などで知られる、”SF界の巨匠”筒井康隆の不朽の名作。
刊行されたのは20年以上も前というから驚き。

 

超能力といってもバトル展開があるわけでなく、集団転移や壁抜けなどのライフハックのような能力が中心となる。
しかも、集団転移は失敗した場合は爆発するらしい。重すぎる。

 

端的に言うならば、この作品はラゴスがただひたすらに旅を続けては、行く先々で街の人々や民族と交流する話なのだけど、彼の旅は楽しいことだけでなく苦難の連続でもある。

 

しかし、ラゴスが凄まじいのは、決してどんなことがあろうと旅を辞めないこと。
何度奴隷の身分に落とされようと、女の子に好かれて求婚されようと、彼は旅を続ける。

 

作品内ではかなりの時間が経っているはずなのに、ラゴスという男が若い頃と変わらず人生の一部かのように旅をしていることが、彼が心から旅を楽しんでいることを物語っている。

 

この作品、非日常の世界を描いているにも関わらず、なぜだか実際に旅に出てみたくなる。
今のご時世では難しいけれども、いつかは一人旅してみたいなぁ。

 

では次回。