91.オーデュボンの祈り/伊坂幸太郎
「未来は神様のレシピで決まる」(p.38)
変てこな人々ばかりが住む島で起こる魔訶不思議な事件を描いた、伊坂幸太郎のデビュー作でもある長編ミステリー。
始めて読んだのは高校生の時だった。
数ある伊坂作品の中でも、一番好きかもしれない。
会社を辞めてコンビニ強盗にも失敗した主人公の伊藤は、気づいたら見知らぬ島に辿り着いていた。
その島には、人の言葉を操るカカシがいた。
しかも、そのカカシには「未来を予言すること」が出来た。
しかしながら、主人公がそんな島での生活に慣れ始めたのも束の間、カカシが何者かによってバラバラにされ殺される。
犯人は誰なのか、未来が見えるはずのカカシがなぜ殺されたのかを明らかにするため、主人公たちは島の住人に聞き込みをしながら手がかりを探していく。
この物語では何よりも、個性豊かな島の住人が数多く登場する。
事実と正反対のことしか言わない画家。
自分の心臓の音を聞くのが好きな少女。
自らの判断で人を殺すことを許された青年。
個人的には、初対面のくせにまるで長年連れ添った友人かのように話しかけてくる日比野が好きだった。主人公の良き相棒であり、なぜか憎めない男。
序盤はハテナが頭を飛び交うことになるけども、その世界観に慣れた終盤には綺麗に伏線を回収して、最終的に謎が収束していくストーリーは圧巻だった。
ついでに、物語の途中にちょいちょい挟まってくる主人公の祖母の達観した口調もなんか好き。
では次回。