14.AX/伊坂幸太郎
何が大変なのかは関係がない。
世の中の人間はどのような者も大変なのだから、どのような状況であろうとそれを労っておけば問題がない。(p.169)
「グラスホッパー」「マリアビートル」に続き「殺し屋シリーズ」3作目となる伊坂幸太郎の短
短編集と言ってもどの物語も繋がっており、 最後に物語が繋がって収束していくのは伊坂作品ならでは。
主人公の兜は殺し屋でありながら、ごく普通の家庭を持ち、妻の機嫌に怯えながら過ごしている。
殺し屋を引退しようと決意するも、なかなか辞めさせてもらえず、 舞い込む仕事に渋々参加してはきっちりこなす毎日。
しかしその傍ら、 妻には些細なことで怒らせたりしないかびくびくしながら、 息子に愚痴を漏らすところが人間味があってよかった。
家族の中の父親としての姿と殺し屋としての姿。
役割は全然違うのに一人の人間としてどちらにも共感させられる部分があった。
最後まで手に汗握る展開でまさに伊坂作品の王道のような小説でした。
個人的には3作の中で1番好 きだった。
蟷螂の斧を侮ってはいけない。
では次回。