人数分の物語を乗せて、電車はどこまでもは続かない線路を走っていく。(p.130)
関西にまたがって走る私鉄「阪急電車」に乗り合わせた乗客たちのもとに起こるささいな出来事が連鎖して、それぞれの人生を少しずつ変えていく、有川浩の長編小説。
いつかぶりの有川浩さん。
あんなにも毎日乗っていたのにも関わらず、まだ読めていなかった。
阪急宝塚から西宮北口までを繋ぐ阪急今津線を舞台にした、各駅までの区間を走る車両の中には思い思いの悩みを抱える人々が乗っている。
図書館でよく見かける女の子と乗り合わせた青年。
息子夫婦との関係に思い悩む老婦人。
彼氏のDVに複雑な感情を持つ女子大生。
宝塚駅を発車した電車が西宮北口駅に辿り着くまでの、たった15分間に起こるふとした出来事に背中を押されるように、彼らはとある決意を抱く。
名も知らない、素性も知らない登場人物たち。
共通点は同じ電車に乗っただけ。
それだけの関係のはずなのに、小さい車両の中でいくつもの想いが駆け巡り、それぞれの心にメッセージが受け渡されていく。
決して互いに深く干渉するわけではないのに、すとんと彼らの心の隙間が埋まっていくようにバトンが渡されていくのが、不思議でいて心地よかった。
この小豆色の電車に毎日乗って大学に向かっていたと思うと、なんだか感慨深いような、懐かしい気持ちになる。出てくる駅名全部分かったなぁ。
では次回。