97.風が強く吹いている/三浦しをん
「走るの好きか?」(p.16)
走るのを辞めなかった二人の少年が、陸上とは無縁の大学寮に住む住人たちと箱根駅伝を目指す、三浦しをんの青春小説。
それまで興味の無かった箱根駅伝を見るきっかけになった小説。
三浦しをんさんのまっすぐな熱さにはいつもやられる。
高校時代に怪我により挫折を味わった大学四年生の灰二にはある野望があった。
それは学生駅伝の最高峰である箱根駅伝に出場すること。
それも、陸上未経験のメンバーが揃う寮の住人たち一同で。
誰もが無謀だと思う夢のような目標。
それでも、その目標を実現できると信じて疑わない灰二が「走ること」にかけて天賦の才を持つランナー走と出会った瞬間から、夢物語は動き出す。
駅伝を走る十人のランナーは個性豊かで曲者ぞろい。
誰もかれも魅力的だけど、自分は王子というキャラが好きだった。
ポンコツだと思われるキャラが必死に頑張る姿にはいつも心が熱くなる。
十人それぞれにストーリーがあり、終盤にかけて彼らの想いが吐露されていくにつれて、より一層登場人物たちに感情移入させられる。
それぞれが走ることに懸ける思いは異なるし
これからもずっと走り続けるとは限らない。
それでもなお、みんなが同じ目標に向かって走り切る姿に
何度も涙腺が緩みそうになった。
まっすぐな熱さに触れたい人はぜひ読んで欲しい。
そして、箱根駅伝も見て欲しい。
では次回。