77.ツバキ文具店/小川糸
文字は、体で書くんだよ(p.155)
鎌倉で先代から続く文具店を営みながら手紙の代筆を請け負う鳩子は、様々な理由で訪れる人たちとの交流を通して自分の想いに気づいていく、小川糸の長編小説。
他人の手紙を本人の代わりに書く代筆と言うお仕事。
彼女のもとには友人への離婚の知らせだったり、天国からのお便りだったり、少し風変わりな依頼が届く。
決して代筆だからと言って心がこもっていないわけではなく、手紙を出す人の想いを掬い取って、紙にしたためる作業は誰にでもできる事ではない。
それぞれの手紙に込める人の想いに合わせて使う紙やペン、筆跡を変えていく。
実際に小説の中にも手紙形式で登場するので、鳩子がどんな風に手紙を書いたのかを見ることができるのもありがたい。
さらに代筆を依頼されるにつれて、彼女の生活の様子やパーソナリティが深く掘り下げられていくので、どんどん親近感が湧いた。鎌倉にも七福神めぐりしに行きたくなる。
ところで、バーバラ婦人やマダムカルピスなど、彼女の周りには不思議なあだ名で呼ばれる友人が多い。なので、読みながらどんな姿をしているのかと頭の中で想像を膨らませながら読むのが面白かったりする。
文庫本の方は左下の絵柄がパラパラ漫画になっているので、最後にパラパラしてみてね。
では次回。