78.法廷遊戯/五十嵐律人
人間が人間を裁くには、確信に近い心象を形成しなくちゃいけない。立証は、そこに至るために必要な事実と論理の積み重ねなんだ。(p.69)
とあるロースクールで行われていた疑似法廷ゲームである無辜ゲームを引き金に、法の世界を目指していたはずの三人の道が違える事件が開幕する。
現役の司法修習生でありながら第62回メフィスト賞を受賞した、五十嵐律人のリーガルミステリ―。
同じロースクールに通う正義、美鈴、馨の三人は一年後全く異なる立場に置かれる。
一人は弁護士となり、一人は被告人となり、一人は命を失って。
もともと彼らが通うロースクールでは学生たちの間で、被害を受けた人物が犯人と目する人物を指定して裁判にかけることで、それぞれが告訴者、被告人、証人、そして審判者に分かれる疑似法廷ゲームを行っていた。
そして、このゲームを行っていた模擬法廷の中で一年後、一人の命が失われる事件が起きてしまう。不可解な謎だけを残して。
この作品では、序盤の無辜ゲームから始まり、後半の裁判の場面まで一貫して、本格的な法律の知識が飛び交う展開にも関わらず、読んでいる人たちを釘付けにするような法廷議論が交わされる。
有罪か無罪か。
その二択では図り切れない複雑な法の世界に隠された真実を暴くかのように、それまで無関係に思われた事件が繋がっていく。
同害報復の原則は復讐ではなく寛容であると言った。
最後まで読んだ後、この言葉が頭から離れなかった。
では次回。