155.死刑にいたる病/櫛木理宇
間違いない。
いま目の前にいる男は、正真正銘の人殺しなのだ。(p.35)
鬱屈とした日々を送る大学生の主人公は、牢獄に囚われた連続殺人鬼から事件の再調査を頼まれたことから、さらなる闇に引き込まれていく、櫛木理宇の長編ミステリ。
個人的に「ホーンテッド・キャンパス」の印象が強かったので、
こんなにも冷酷で鬱々としたストーリーも描けることにびっくりした。
第一希望の大学に入学することが叶わず、交友関係もままならないまま孤独な大学生活を送っていた主人公の元に、ある一通の手紙が届く。
その差出人とは、子どもの頃、常連として通っていたパン屋の主人であり
24人の少年少女を殺害して死刑判決を受けた連続殺人鬼『榛原大和』だった。
精悍な顔立ちと柔らかな人柄によって、周囲から絶大な信頼を得ていたにも関わらず、裏ではハイティーンの少年少女を残酷な手法で嬲り殺していた彼からの依頼とは、自ら起こした連続殺人にカモフラージュされた、たった一件の冤罪証明。
主人公は彼の行動を不審に思いながらも依頼を承諾し、事件の真相を探っていくが、次第に『榛原大和』の内に潜む陰りに魅せられていく。
一人のシリアルキラーの生い立ちから、犯罪に手を染めていくまでの過程を辿っていくにつれて、彼の壮絶な人生に主人公もろとも、張り付いていた心象が揺り動かされる。
何よりも、主人公の良き理解者として対話する大人としての顔と、連続殺人鬼として暗躍する裏の顔が、ずっと同一人物として重ならないまま物語が進んでいくことが恐ろしかった。
映画化された予告映像を見たら、阿部サダヲがそのまますぎて。
目の前に現れたら、立ち竦んでしまうかもしれない。
では次回。