カタコトニツイテ

ゆる~い本の感想と紹介をしています。想うこともつらつらと。

「ソロモンの偽証/宮部みゆき」の感想と紹介

166.ソロモンの偽証/宮部みゆき

 

声が伝わる。空を飛び交う。行っては戻り、戻ってはまた投げ返される。心を乗せ、時には取りこぼしながらも。想いを告げ、時には嘘を交えながらも。(第1部 上 p.408)

 

一人の生徒の自殺から始まった一連の事件に終止符を打つため、生徒たちは真実を追い求める学級裁判を開廷する、宮部みゆきヒューマンミステリー。

 

全3000ページを超える一大巨編。
しかし、登場人物たちが行動に至るまでの想いが細部まで深掘りされているため、全く物語の間延びを感じさせない。むしろ、物語の密度に驚かされる。

 

雪が降りしきるクリスマスの夜、ある中学校で一人の生徒が命を絶った。

 

誰とも人付き合いすることなく、クラスで孤高の存在であった彼の死は、当初、疑いようのない「自殺」だと断定されていたが、関係者に届いた告発状の手紙がその状況を一変させる。

 

不必要な介入を嫌がる学校側、我が子の生活を守りたくて必死な保護者側、さらなる真実を追求しようと囃し立てるメディア、そして、新たに立ち込める不可解な噂。

 

様々な人物の思惑が交差する中、悪意も善意も引っ括めたありとあらゆる行動が、さらなる負の連鎖を引き起こしていく。

 

そんな混乱に塗れた状況の中で、真実を有耶無耶にしないために、そしてクラスメイトの死の真相を明らかにするために、生徒たちは権力や圧力に抗いながら、自らの手で裁判を開くことを決意する。

 

勇敢な彼らが立ち向かうものは、事件そのものではなく、誰かがひた隠しにする真実であり、これまで見ようとしてこなかった人々の行き場のない悲痛な想いだった。

 

決して自己満足ではなく、続々と露わになる真実に傷つきながらも、その事実から目を逸らすことなく、真摯に受け止めていく彼らの勇姿を目に焼き付けて欲しい。

 

では次回。