ならばもう忘れてしまおう。
両親のことも、恐ろしい夜のことも、忘れてしまおう。(p.50)
屋敷から逃げだした名家の少年は、辿りついた村で出会った少女とともに、呪われた土地であるレーエンデの運命を変える戦いに身を投じていく、多崎礼のファンタジー小説。
行く末を案じていた『レーエンデ国物語』の続編となる物語。
しかし、そんな思いとは裏腹に容赦なく心をえぐる展開が続く。
何者かに襲撃された屋敷から命からがら逃げだした主人公の少年・ルチアーノは、やがてレーエンデ東部に位置するダール村に行きつく。
炭鉱で栄えるその村で、彼は生まれつきの怪力の持ち主であるテッサという少女に出会い、これまでとは一変した、穏やかな生活を送るようになる。
ルチアーノは自らの身分を捨てて、ダール村で新たな人生を歩み始めるが、やがて村にも戦争の足音が近づき、戦場へと彼らは駆り出されていく。
あまりにも過酷で胸が張り裂けそうになる出来事の数々に、この世界に存在していないはずの自分でさえ、怒りと悔しさ、なすすべない無力感におそわれる。
しかし、レーエンデの夜明けが訪れる日まで、革命の物語は終わらない。
その道のりに何が起ころうとも、その最後を見届けたいという気持ちは変わらない。
では次回。