カタコトニツイテ

頭のカタスミにあるコトバについて。ゆる~い本の感想と紹介をしています。

「神楽坂スパイスボックス/長月天音」の感想と紹介

222.神楽坂スパイスボックス/長月天音

 

「きっと、私がスパイス料理に勇気づけられたからかもしれませんね。私にとって、スパイスは、魔法の粉なんです」(p.57)

 

神楽坂の路地で小さなスパイス料理店を開いた2人の姉妹は、訪れる人々に心も体も温まる料理を振る舞っていく、長月天音短編小説

 

もともと、スパイスについて詳しくなりないと思っていたところ、たまたま本屋で見つけた本だった。

 

雑誌編集者として働いていた主人公のみのりは、5年間付きあっていたレストランの若きオーナーシェフにふられたことをきっかけに、会社を辞めて自らも飲食店を開店することを決意する。

 

かつて料理人として働いていた姉のゆたかを誘い入れ、新しく始めたのはスパイス専門料理店だった。

 

神楽坂の路地の奥に佇む小さな店には、その魅惑のスパイスの香りに引き寄せられた、思い思いの悩みを抱える人々が立ち寄っていく。

 

そんな彼らに振る舞われるのは、モロッコで親しまれるタジン鍋アルザス地方の伝統料理であるシュークルートなど、世界各地で愛されるスパイス料理の数々だった。

 

スパイス料理と聞くと、独特な香りに伴う辛さをイメージする人も多いかもしれない。しかし、この作品では、そんなスパイス料理の固定観念をひっくり返すような、心も身体を温めてくれる料理と、姉妹のゆるっとした会話が読者を迎えてくれる。

 

読みおわったあとは、路地の奥にある小さなスパイス料理店を神楽坂まで探しに行きたくなった。近所にあったら、間違いなく常連になっていると断言できる。

 

では次回。