カタコトニツイテ

頭のカタスミにあるコトバについて。ゆる~い本の感想と紹介をしています。

「四畳半タイムマシンブルース/森見登美彦」の感想と紹介

61.四畳半タイムマシンブルース/森見登美彦

 

「タイムマシンだったりして」

恥じらうように小さな声だった。

物干し台の風鈴がちりんと鳴った。夏であった。(p.65)

 

 

舞台サマータイムマシン・ブルースのストーリーが四畳半神話大系の世界観と登場人物たちで繰り広げられる、森見登美彦のSFファンタジー

 

二つの作品の融合とも言えるこの作品では、タイムマシンで昨日に戻って壊れる前のクーラーのリモコンを取ってくるという奇想天外な物語を、場所を四畳半に置き換えてうまく”森見登美彦の世界観に落とし込んでいた。

 

実際、サマータイムマシン・ブルースと全体的なストーリー展開は同じなのだけど、四畳半神話大系のキャラクターがやりたい放題している様子はまったく別の作品として楽しむことが出来る。

 

ちなみに、毎度のごとく薔薇色のキャンパスライフに憧れるも四畳半で寂しく過ごす主人公を始め、悪友の小津や黒髪の美少女明石さん、万年学生の樋口さんなど四畳半に出てきたメンバーは健在。

 

そんな学生たちが阿呆なことをやってはてんやわんやするドタバタ感や、周りの友人たちに振り回される主人公

 

どれも二つの作品に共通しているので、読んでても違和感なく四畳半の登場人物たちが物語に溶け込んでいた。

 

特に、小津の立ち位置がいい味を出している。主人公がハラハラする原因を作っているのはいつも通り小津のせいなのだけど「まぁ小津なら仕方ない」と思わせる強烈さがあるので、ある意味尊敬してしまう。憎めないキャラ。

 

他のキャラも相変わらずで、明石さんは不思議な発想でみんなを唖然とさせているし、城ケ崎さんは鼻につくし、羽貫さんは自由気ままなお姉さん。

 

いつかに読んだときの世界観そのままで、終始懐かしい気持ちで読んでいた。

 

どちらの作品も見てからこの作品を読むと、雰囲気や役柄が伝わりやすいのでぜひ見てみてください。それか、逆にこの作品を読んでから二つの作品を見るのも面白いかもしれない。

 

嗚呼、明石さんと花火大会にいって屋台を巡りたい人生だった。

 

では次回。