カタコトニツイテ

頭のカタスミにあるコトバについて。ゆる~い本の感想と紹介をしています。

「本と鍵の季節/米澤穂信」の感想と紹介

207.本と鍵の季節/米澤穂信

 

そうしながら、僕は友を待っていた。(p.351)

 

高校で図書委員を務める二人の男子生徒は、周りで起きる本と鍵にまつわる不思議な出来事の謎を解いていく、米澤穂信の青春ミステリ。

 

高校二年の堀川は同じく図書委員の松倉とともに、不人気な図書室で何でもない話をする傍ら、雑務に勤しんでいた。

 

そんなごくごく普通の学生である彼らが居座る図書室には、なぜだか一風変わった悩みを相談する人々が訪れる。

 

祖父が残した開かずの金庫テスト問題が盗まれようとする事件自殺した生徒が読んだ最後の本の行方

 

ほんの些細な会話の切れ端から謎を解いていく、似ているようでどこか異なる二人のやりとりは、時折、ふふっと笑ってしまうこともあって、心地よい温度感だった。

 

また、斜に構えているような態度の中には、素直な感情が垣間見える部分もあって、等身大の彼らの心内での葛藤はとてもリアルに感じられる。

 

はじけるような青春物語ではないし、爽快な結末が待っているわけではないけれど、きっと彼らが過ごす日常は、嘘偽りのない青春だと信じられる気がした。