132.カラフル/森絵都
この世があまりにもカラフルだから、ぼくらはいつも迷っている。(p.187)
自殺を図った少年の体を受け継ぎ、家族や友達との関係を清算しながら自らと向き合い始める、森絵都の不朽の名作。
子どもの頃に読んだ人が多いのかもしれない。
自分が読んだのは最近だけど、何だか懐かしかった。
生前の罪によって生まれ変わるための輪廻のサイクルから外された主人公が、運よく天使界の抽選に当選し、現世での再挑戦のチャンスを得たことから物語は始まる。
彼は天使の言いつけで自殺を図った少年の体を一時的に受け継ぎ、魂だけがホームステイした状態で周りに気づかれないように元の少年のように振る舞って生活する事になる。
しかし、見せかけの信頼関係や学校での孤独な日々、そして信じていたものから裏切られる感覚は、徐々に主人公にも暗い影を落としていく。
この物語では、特殊な状況下である主人公だから感じる心の機微がとても丁寧に描かれている。どこか他人事でありながら、自らの感情を抑えきれずに周りに吐露する。
でも、だからこそ、そんな彼が起こす行動の変化や過去の受け止め方に胸を打たれる。
誰もがカラフルな色を羨んで追い求め、見えないキラキラしたものになりたがる。
そうしていつしか自分の色を決めつけて
周りの色に馴染めずに窮屈な世界に閉じこもってしまう。
だけども、眩しくらいに色鮮やかな世界で自分を見失ったとしても、見えない色なんかに惑わされる必要はないのだと思う。
この世があまりにもカラフルで複雑怪奇であるのと同様に、自分たちも清濁混ざった一色では表しきれない様々な一面を併せ持っている。白か黒かなんて誰にも分からない。
良いところばかりではないし、悪いところばかりでもない。
そんな登場人物たちの姿が、とても人間らしかった。
では次回。