カタコトニツイテ

頭のカタスミにあるコトバについて。ゆる~い本の感想と紹介をしています。

「シャドウ/道尾秀介」の感想と紹介

190.シャドウ/道尾秀介

 

人は、死んだらいなくなる。いなくなって__

ただ、それだけ。(p.150)

 

妻を亡くした父親と小さな息子の周りでは、幼馴染の母親の自殺を皮切りに次々と不幸が起こる中、予想もつかない真実が最後に明かされる、道尾秀介の長編小説。

 

高校生の頃に読んだ思い出深い小説。
道尾さんが描く少年は、不安定だけども芯は折れない、そんな大人になる前の心の内を秀逸に表現していて、不安と希望が入り混じった不思議な感覚になる。

 

母親を癌で亡くしたことから、小学5年生の凰介は病院に勤務している父親の洋一郎とともに、二人だけの生活を始めることになる。

 

しかし、その数日後、幼馴染である女の子の母親病院の屋上から飛び降りて自殺してしまう。

 

父と子、二人の視点から物語が進んでいくにつれて、どこか不可解な行動や不穏な空気を彼ら自身も感じ取っていくものの、その怪しげな部分を見いだせないまま、不幸な出来事は連鎖していく。

 

そして、その不可解な行動の真相が明かされた時、夜の静けさを破りさるように、読者は脳裏に描いていた世界が一変するような感覚に襲われる。

 

ささやかな幸せを願う少年が暗い闇に飲み込まれないように、辛い出来事が立て続けに起こる中でも、決して弱い心を見せずに気丈に振る舞い続ける。

 

序盤では父親にとって守られる存在として認識されている少年が、次々と降りかかる謎に臆せず挑んでいくことで、信じる人を守るために成長していく姿に胸を打たれた。

 

では次回。