170.神のロジック 次は誰の番ですか?/西澤保彦
わたしたち人間はね、自分が信じるものしか事実とは認めないの。
たとえそれが嘘でも、ね。(p.81)
世界のどこにあるのか分からない、街から遠く離れた全寮制の学校に集められた少年少女たちは風変わりな課題に挑む中、予想だにしない事件が巻き起こる、西澤保彦の長編ミステリ。
西澤さんが描く、少年主観の語りがとても好き。
大人びているのにあどけなさが残っている感じ。
主人公の少年は理由も不明のまま、人里離れた「学校」と称される建物に連れて来られ、「推理ゲーム」などの一風変わった課題を課される生活を送っていた。
その「学校」には、主人公の他にも様々な国から同じような状況で集められた少年少女たちが住んでおり、彼らとともに共同生活をしながら仲を深めつつあった。
しかし、新たに寮のメンバーが増える知らせを聞かされると状況は一変し、これまで感じてきた違和感や恐怖の正体が徐々に明らかになっていく。
閉鎖的な学校での生活、集められた個性豊かな少年少女たち、不可解なルール、そのどれもが魅力的で、読んでいてその不穏な世界観にどっぷりとハマってしまった。
特に後半の怒涛の展開では、前半の世界観を隠れ蓑にしながら当然としていた前提が覆され、抱いていたイメージが脆くも罅割れていく様を体感させられる。
インターネットやSNSを発端として、様々なコミュニティ形成が容易となった現代で、自らの信条や感性を擦り合わせずとも集団に属することが可能となった。
疑うことから目を背け、ただ信じることの「強さ」と「危うさ」が浮き彫りになっていくこの作品は、20年前に書かれたものとは思えないほど、今の時代に対してのメッセージが込められているように感じた。
では次回。