カタコトニツイテ

ゆる~い本の感想と紹介をしています。想うこともつらつらと。

「流浪の月/凪良ゆう」の感想と紹介

169.流浪の月/凪良ゆう

 

世間は別に冷たくない。逆に出口のない思いやりで満ちていて、わたしはもう窒息しそうだ。(p.117)

 

動くことのない事実決して理解されない真実の狭間で揺れ動く二人の男女が、世間の目に晒されながら自らの居場所を探し続ける、2020年の本屋大賞を受賞した凪良ゆうの長編小説。

 

当時、9歳だった少女は、両親を失い叔母の元で過ごしていたが、自分の居場所が見つけられずに公園のベンチに佇んでいたところ、大学生の男に手を差し伸べられる。

 

その手を取って、彼の家で過ごした2ヶ月間は、居場所を失った少女がこの世界で生き続けるための拠り所となっていった。

 

しかし、そんないつまでも続けばいいと思っていた時間は「少女誘拐事件」と世間では叫ばれ、彼らは被害女児犯罪者と言う烙印を押されたまま、その後の人生を生きることになった。

 

そして、15年の時を経て、彼らは再会する。
あの頃の記憶を携えて、少女は彼と出会ってしまう。

 

彼らに浴びせかけられる憐れみや非難は、優しさや正義感といった衣を纏ったまま、忘れて欲しいと願う人たちに襲いかかっていく。

 

人にとって優しさは、見ず知らずの人間に救いの手を差し伸べることだったり、相手のためを思って話を聞いてあげることだったりする。

 

しかし、優しさと言う善意で塗り固められた行動は、時として拒否することのできない諸刃となる。そして、確かにある隔たりを自覚しないまま押し付けられる優しさは、誰もが無自覚に手にしている可能性のあるものだ。

 

凪良さんが描く「普通」ではない人々は、きっと存在している。
見えている場所にも、見ようとしていない場所にも。

 

そして「普通」ではない人を掴んで離さない様々な形で作られた足枷を、凪良さんは一つ一つ丁寧に書き出しながら、登場人物の複雑な心情を描いていく。

 

それでも、二人が世間との間に引いた一線を、優しさと言う言葉を差し置いて、軽々と超えていくことができる稀有な存在が、彼らのことを救ってくれるんだろうと思った。

 

では次回。